ジョブディスクリプション
求職者が仕事を探す際、かつては金融、メーカー、サービスなど「業界」から企業をしぼりこんで自分の希望に合った仕事を探すという行動が一般的でした。それが昨今は、好きな働き方や身につけたいスキル、キャリア志向など個々の関心にそったワードをかけ合わせて仕事を検索し、合致した仕事に関する求人情報「ジョブディスクリプション」を閲覧するというケースが増えてきています。
「ジョブディスクリプション」とは
「ジョブディスクリプション」とは、「職務記述書」のことを言います。
従来の一般的な「募集要項」は、給料などの待遇と、仕事の目的や役割が中心で、具体的な仕事内容については簡単な内容にとどまっていました。
一方、「ジョブディスクリプション」は、日々のルーチン業務から発生する可能性のある特別な業務、必要な能力・スキル・経験や権限の範囲などを含め、さらに詳細な情報を記述します。
盛り込む項目の例としては下記のようなものがあります。
●職務に関するもの
- 職務の内容
- 職務の目的
●仕事の役割
- 目標
- 責任
- 権限の範囲
- 関わりを持つ社内外の関係性
●必要な能力
- 技術・知識
- 資格
- 経験
- 学歴
実践企業はどのようにジョブディスクリプションを作成し、効果を上げているのか ─Owned Media Recruiting SUMMIT vol.4 レポート(2)
「ジョブディスクリプション」の目的と効果
「ジョブディスクリプション」を作成する目的は、募集するポジションにおける「仕事の具体的な内容」や「必要な能力」、「適した価値観」を詳細に記載することで、求める人材が仕事を探す際の検索キーワードとしっかり合致させていくことです。
これによって、求職者が事前に抱いていたイメージと、入社後のイメージが異なり実力を発揮できなかったり、早期退職をしてしまうといったミスマッチを軽減するだけでなく、そもそもの求職者の検索行動に対応して、適正な出会いの機会を増やすことにつながります。
一方で、明確に仕事内容を記載して、その内容に納得して入社してもらうことになるため、
記載されていない業務を依頼しづらいなど、仕事内容が柔軟性に欠けるケースもありえます。会社としてその人材を採用することの目的と、求める人材の入社後のキャリアを考慮した上で、記載するべき仕事内容の整理と検討が重要です。
「ジョブディスクリプション」について、基本的なイメージについてはこちらをご覧ください
「ジョブディスクリプション」の書き方
採用実務的な観点から言うと、採用したい人材が採用媒体や検索サイトなどの検索窓にどんなキーワードを入れるかを想定し、そこから逆算して内容を固めていく必要があります。
そのためには、抽象的な人材要件を確定するのみならず、具体的な採用したい人材のイメージ(ペルソナ)があるとスムーズです。その際のヒントとなるのが、募集する職種で、すでに社内で活躍している社員に注目することです。人事担当者は具体的にどのような仕事をお願いしたいか、そのためにどういう人に来て欲しいか、現場の社員にヒアリングするとイメージがわいて良いでしょう。
「ペルソナ」について、効果的な作成方法について、より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください
ペルソナを活用し「欲しい人材像」を明確化する―オウンドメディアリクルーティング実践方法(1)
そうしたプロセスを踏まえつつ、充実した「ジョブディスクリプション」の作成を進める際は、以下のような項目をベースにすると良いでしょう。
●採用企業に関する一般情報
- 会社名
- 職種名
- 勤務地
- 採用プロセス
- 評価制度
●雇用条件
- 給与
- 雇用形態
- 各種手当
- 勤務時間
- 休日・休暇
- 福利厚生
- 働く環境
●企業カルチャー
- 企業のミッション(理念)、ビジョン(使命)、バリュー(行動規範)
- 部署・チーム成員の特性について
- 社員インタビューによる具体的事例
●職務情報
- 仕事の目的・意義
- 仕事概要
- 仕事詳細(ルーチンワークや定期的に発生する業務の他、ありうる業務を可能な限り)
- プロジェクト例
- クライアント例
- 募集職務の興味付け(経験できること、身につけられる能力・スキルなど)
●求められる能力
- 必須経験・スキル
- 歓迎経験・スキル
- 求める人材像
これらの軸で作成するにあたり、職種名はわかりやすいものでイメージに齟齬がないようにする、業務内容はできるだけ具体的に細分化して書く、求めるスキルや経験は分量と必須度のバランスに注意する、労働条件は具体的に、福利厚生や待遇は正確に書く、などの注意するべきポイントがありますが、それらについては最後でご案内している記事をご覧ください。
求職者目線で常に情報のアップデートを
「ジョブディスクリプション」は、状況変化に応じて適宜メンテナンスを行う必要があります。自社の細かなニーズを精緻に表現して求職者に届けることが、出会いの機会の創出やマッチング精度を高めることにつながるのです。
自社の伝えたいことだけを記載するのではなく、常に求職者の目線に立った情報発信で、「選ばれる企業」を目指しましょう。
監修:株式会社 人材研究所
◆採用市場の現状とこれからを理解しつつ、「ジョブディスクリプション」についての理解を深めるためのコンテンツも併せてご覧ください
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