採用広報

2021/06/18

企業の活動において、広報と採用は基本的に別のものとして捉えられているケースが多いかもしれません。しかし現在では、採用活動における情報発信の重要性が見直されて始めています。人事の中に広報活動の考え方を取り入れる「採用広報」とはどのようなものなのでしょうか。

採用領域における“広報”とは?

採用領域における「広報」について、一般社団法人日本経済団体連合会の『「採用選考に関する指針」の手引き』では以下ように記載されています。

“広報活動とは、採用を目的として、業界情報、企業情報などを学生に対して広く発信していく活動を指す。”

こちらは学生を対象とした新卒採用についてのものとなりますが、この当たり前とも感じられる考え方が、中途採用を含めさまざまな採用の領域において重要性を増しています。

現在、少子高齢化等による労働者不足などにより、求人情報を外部求人サイトに掲載するといった従来の採用手法だけでは、自社の求める人材の採用が難しくなりつつあります。また、社会的にも働き方の多様性が広がりつつあり、ワークライフバランスの重視が進むなど求職者の価値観も大きく変化し始めています。

このような状況のなか、求職者に選ばれる企業となるためには、単なる企業情報だけでなく、企業理念や事業の意義、文化などに加えて、求職者何を求めているかを考えながら情報発信を行うことが求められます。

こうした変化に合わせて、改めて「採用における広報」を意識しながら、自社の発信を見直しが必要です。

発信の方法は、自社発行の広報誌やパンフレット、カタログ、インターネットの自社Webサイト・ブログなど様々ありますが、こうした企業や組織が所有する情報発信媒体を「オウンドメディア」と言います。これらの「オウンドメディア」を求める人材像や自社の状況などを含めた採用の目的に合わせて、適切に使い分けることが重要です。

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「採用広報」に期待できる効果

・自社の認知拡大
「採用広報」を積極的に行うことで、既に仕事を探している求職者はもちろん、今すぐ就職や転職をしたいと思ってはいない潜在的な求職者にも自社の情報が届く可能性が高まるため、自社の認知の拡大が期待できます。

・理解度向上による採用ミスマッチ抑制
事前に自社についての情報が充分に伝わっておらず、入社前に抱いていたイメージとギャップを感じてしまったことが原因で、せっかく採用した人材が早期退職してしまうケースは少なくありません。

しかし、自社の理念やビジョン、事業の社会的意義、人材に対する考え方などを明確に発信することで、求職者の企業文化や社風への理解度を高めることができます。これによって採用後に「思っていた仕事内容と違う」などのミスマッチの緩和につながり、早期退職の防止が期待できます。

・データの蓄積と分析
先述のオウンドメディアの内、採用サイトなどのWebサイト、メールマガジン、SNSなどのインターネットサービスの多くは、アクセス解析を行うことができます。このため、それぞれのチャネルでどれだけの求職者に情報がリーチしたのか、そして応募や資料請求などのエンゲージメントにつながったのかをデータ化し解析することができます。

それにより、求人情報や採用サイト内の情報をより求職者が必要としている内容に書き換えたり、発信方法や頻度を調整したり、より効率的な「採用広報」へと改善していくことが可能になります。

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ゴールを共有して一貫性のある情報発信を

ここまで採用における広報の考え方について解説しましたが、「採用広報」を成功させるためには、なによりも「なんのためにどんな人材が必要なのか」といった採用におけるゴールを社内でしっかりと共有することが不可欠です。役職や部署を横断して連携をとりつつ、求職者が本当に知りたい情報を見極め、一貫性のある発信を心がけましょう。

 
 

監修:株式会社 人材研究所

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