ブログや社内イベントを活用し、潜在的な求職者にまでアプローチ


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「事業推進に必要な、高付加価値人材が確保できない」
…いま多くの企業がこのような悩みを抱えている。
採用においては、求めるスキルを持つだけでなく、自社の文化にフィットして長く活躍できる人材とマッチングすることが重要だ。そのためには、企業と人材が「理解し合う」ことが求められる。人材に対し、自社の情報を的確に届けられる土壌を作ることが、高付加価値人材に「自社を理解してもらう」鍵となるのだ。
「イノベーション時代に求められる採用」をテーマとしたイベントが2018年12月に開催される。そこに登壇する3社の人事担当者を直撃し、3回にわたって「これからの時代に、あるべき採用」を探っていく。
第2回にあたる今回は、採用において「相互理解」に重きを置いているという、株式会社マネーフォワード 社長室長 人事部長 服部穂住氏に話を聞いた。

「採用のためにやれることは何でもやる」の姿勢で、3年で社員数3倍に
──御社は創業からわずか6年にもかかわらず、多角的な事業を展開されたり子会社を設立しておられたりと、非常に躍進しておられる印象を受けます。やはり、その中で採用にも力を入れていらっしゃるのでしょうか。
おっしゃる通りです。「採用熱」は創業当時から強くあります。
創業当時はリファラル中心の採用でした。しかし、ちょうど私がマネーフォワードに入社した創業3年目の頃に社員が100人くらいにまで膨らみ、リファラル採用では追いつかなくなってしまったんです。そのフェーズの変化に伴い、「やれることは何でもやる」という姿勢であらゆる採用手法を駆使して拡大してきました。結果、社員数は現在300人を超えました。3年でだいたい3倍以上伸びています。
──100人の会社だった頃と、300人の会社に成長した現在。それぞれ採用のやり方が全く違ってくると思うのですが、それぞれ具体的にどのような施策をとった(とっている)のか教えていただけますか。
最初の頃は、まさに直接会いにいく採用がメインでした。社員に「いい人を紹介してほしい」とお願いしても、知り合いでなければ紹介できませんよね。ですから、「知り合いじゃなくてもいい。自分が働きたいと思う人を教えてほしい」と社員に依頼して、非常に長い「社員の働きたい人リスト」を作成したんです。その後リストに従い、人事部のスタッフが一人一人に直接あたりました。
現在は、「相互理解」を一番大事にしています。言い換えれば、大量に採用してもダメ。結局、定着してくれなければ意味がないんです。そのために、採用広報に力を入れています。自社の採用サイトなど様々な媒体を利用していますが、メインはブログです。
具体的にどういう情報を発信しているかというと、「個人・法人問わず、すべての人のお金の悩みを解消するプラットフォームになる」という弊社のビジョンやミッション、バリューを紹介したり、各事業で求めている人材についてジョブディスクリプションをその都度内容をアップデートしつつ記載したりしていますね。あくまで採用であり、広報ではないので、募集の優先順位を元に情報を出すというのは凄く意識しています。
ブログでの情報発信には、「こういう部署があります」「こんな人を募集しています」と知らせる社内広報の意味もあります。社員にも他の部署や人について深く知ってもらうことで、「会社が成長していくにつれ、顔と名前が一致しなくなる」というのが解消できますし、リファラルに繋げられるんです。
会社が変化するのと同じ速度で、人事の発信する情報も変化していく
──ジョブディスクリプションなどについて、その都度アップデートを繰り返しながら発信しているとおっしゃっていましたが、その分、人事部には素早い動きが求められるのではないでしょうか。
会社自体がどんどん変化しているので、人事がやっている施策自体も変化していかないとおかしいと思っています。ですから、やはり社員から意見をもらって常に変わる、変えるというのは意識していますね。弊社では管理部門の中ではなく、社長室の中に人事部があるんですが、それは “攻めの部署”だと認識されているからです。
変化に迅速に対応するために気をつけていることは、2つあります。
まず、情報発信の責任者を決めること。全員が片手間でやってしまうと、どうしても後回しになってしまいます。
もうひとつは、人事部以外の社員を採用に巻き込んでいくこと。人事部だけで情報をアップデートしていこうとすると、どうしても限界があります。たとえば、求人情報ひとつとっても、人事部が気づいて「この情報、新しくしましょう」と声を上げるのでは遅いんです。ですから、該当する事業部がきちんと気づいて「アップデートしましょう」と声をかけてくれるよう、普段から関係を築いていくようにしています。「人事といっしょに、みんなが採用をやる」。それを凄く大事にしていますね。
──具体的には、どのように他の事業部と協力的な関係を築いておられるのでしょうか。
代表取締役社長 CEOの辻が「採用は社員みんなでやるものだ」と常に発信しています。
また、採用を自分ゴト化してもらうため、リアルな採用イベントを社内で行い、そのイベントの運営に関わってもらうようにしています。これは人事として工夫している点ですね。具体的に言うと、応募者への説明などを担当してもらうんです。目の前にマネーフォワードで仕事をすることに興味を持っている方がいるわけです。凄く手応えがあるんですよね。結果的に、「ジョブディスクリプションのこの部分を変えたい」「こういうイベントをやりたい」という要望が他の部署から上がってくるようになりました。
また、社内のフリースペースで「マネーフォワードハッピーアワー」という全社での懇親会を行っているんですが、そこに求職中の方や選考中の方を呼べるようにしています。すると、応募者の方に社風が伝わりますし、面接中にはなかなか聞けないような質問を気軽にすることができます。そうして相互理解を深めることで、よりマネーフォワードのカルチャーに合う人材を見つけられるんです。
求人媒体を見ていない、潜在的な求職者へも情報を届ける
──従来のような、まず転職サイトなどに登録して、面接を受けて……という流れ以外にも採用に至るルートがあるということですね。
弊社で採用に至るルートは無数にありますね(笑)。面接に来ていただくもよし、カジュアル面談という形で一度オフィスに遊びに来ていいただくもよし、ハッピーアワーでいろんな社員に会っていただくもよし……。人材の獲得競争が激化していく中で、そのために人事部ができることは、「自社で活躍していただけるような人材を採用するルートを増やす」だと思います。
より具体的に言うと、顕在的な求職者だけでなく、潜在的な求職者にも見つけてもらえるようにしないといけません。そういう人達は、求人媒体から応募してくれることはないと思うんですよ。
弊社は自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」や、フィンテックをテーマとした新聞、雑誌記事から認知していただくことが多いです。ですから、そこで弊社を知った方がネットでマネーフォワードを検索し、弊社発信のブログを呼んで、「こんな社風なんだ」と理解した上で面接に来る。よい採用を叶えるために、その流れは強く意識しています。