「だれと、なにを、なんのために」LIFULLがビジョンを明文化し続ける理由

2019/02/28
「だれと、なにを、なんのために」LIFULLがビジョンを明文化し続ける理由

株式会社LIFULLは、“日本一働きたい会社”を掲げることで知られる。社員のエンゲージメントスコア(企業との相互理解・相思相愛度合い)を評価する「ベストモチベーションカンパニーアワード2017」では第1位(※1)、従業員意識調査によって評価される「働きがいのある会社」では7年連続ベストカンパニー選出(※2)など、それは目に見える形で評価されている。このように魅力的な組織作りを実現できる理由は何か。そして採用はどのように行われ、組織作りに貢献しているのか。入社以来12年間人事に携わる、LIFULL執行役員Chief People Officer・羽田幸広氏に話を聞いた。

(※1)リンクアンドモチベーション主催
(※2)Great Place to Work(R)主催

ロゴのモニュメントに腰掛ける羽田さん
羽田 幸広氏。株式会社LIFULL 執行役員Chief People Officer。1976年生まれ。上智大学卒業。人材関連企業を経て2005年6月ネクスト(現LIFULL)入社。人事責任者として人事部を立ち上げ、企業文化、採用、人材育成、人事制度の基礎づくりに尽力。2008年からは社員有志を集めた「日本一働きたい会社プロジェクト」を推進し、2017年「ベストモチベーションカンパニーアワード」1位を獲得。7年連続「働きがいのある会社」ベストカンパニー選出(2011年〜2017年)、健康経営銘柄選定(2015年度、2016年度)など、企業として高い評価を得るまでに導いた。

ビジョンを言葉に落として伝えあう

インタビューにこたえる羽田さん

──「日本一働きたい会社」とは、社外から見ても惹かれる職場ですね。御社サイトを拝見しますと、「日本一働きたい会社」の定義は、「経営理念の下に集い、あふれる挑戦の機会の中で成長し続けるチーム」であると書かれています。そのようなお考えを持つに至った経緯を教えてください。

弊社は、もともと「不動産業界を変革したい」という社長の想いに共感した社員が集まってきた会社です。1997年に設立して以来、おかげさまで業績は順調に伸びていきました。ところが事業が拡大して社員数が増えていくと、事業に対する考え方でぶつかるなど社内のムードが悪くなることもあり、社員の退職が続いたことがありました。どんなにスキルの高い人であっても、会社の目指すところを理解、共感してもらえなければ、逆に社内の士気に悪影響を及ぼすこともある。
そこで、社員が価値観を共有して同じ方向を向いた上で、多様な仕事をしていくことができるようにしなければならないと考え、2005年4月にLIFULLが大切にする社是、経営理念、ガイドラインを記載した「ビジョンカード」を作りました。ビジョンカードの作成にあたり社長の井上が作成した原案をベースに全社員で議論し、その後、経営陣でさらに3カ月ほど議論を深め、決めていきました。
「日本一働きたい会社」の定義には、「私たちは、あくまで経営理念を実現するために集まったチームであり、一人ひとりが経営理念の実現に向けて挑戦していこう、そんな挑戦にワクワクする人にとって働いてみたい会社をつくっていこう」、という想いが込められています。

──サイトでは、「あらゆるLIFEを、FULLに。」というコーポレートメッセージをはじめ、「社是」「事業方針」「オフィスデザイン」「ロゴ」などに込めた意味や想いなどを、一つ一つ明記されていらっしゃいます。

社員が同じ方向を向くためには、理念や価値観を文字に落として伝えあうことが大切だと考えています。

ライフルのビジョンカード

さらに、社員だけでなく、お客様や入社を希望する学生や転職者に対しても、私たちの目指しているものをしっかりと伝える必要があると思っています。まずはビジョンカードを作成し、社員やお客様、入社希望者などに配布していましたが、それだけでは伝わらないこともありました、例えば、社是の「利他主義」。社会貢献志向の人が増えた今であれば違和感はないかもしれませんが、ビジョンカードをつくったころは馴染みがない人も多く、「嘘っぽい」「それで飯が食えるのか」と言われてしまうことも少なからずありました(笑)。それを理解し共感してくれる人に入社してもらうには、ビジョンカード以外のメディアを通して、もっと紙幅を割いて、LIFULLの文化を全面に打ち出していこうと、コーポレイトサイトや採用セミナーでも、仕事内容はほぼ伝えず、経営理念や戦略の説明に多くを費やしました。

私たちは、世界75億人の人々の人生、暮らしを幸せで満たしていく事業を行おうと思っています。そのためには、7人の役員が一生懸命事業プランを考えてもとても追いつかない。今いる約1300人の社員それぞれが感じている社会の課題を、事業を通して解決するスキームにしないと実現できないと考えています。そのために社会に対して何らかの思いを持った人を採用する必要がある。「今の世の中、やりたいことがある人は少ない」と言われることもありますが、私たちはその少ない層を採用したい。その人たちにチャレンジする機会を提供し、新規事業をリードしてもらうことをイメージして採用活動を行っています。目指していることを言語化して明確に打ち出し、ビジョンやカルチャーがフィットする人を採用しているのです。

発信することで、自社に合う人を「スクリーニング」できる

インタビューにこたえる羽田さん

──ビジョンやカルチャーにフィットする人材を見極めるために、採用で工夫していることはありますか。

前提として情報発信の段階でそれらのメッセージをかなり強く打ち出しているので、そこである程度スクリーニングされていると思います。「この会社は自分と合う」と思う人でなければ、エントリーしてきません。

新卒採用における工夫の例をあげると、選考の過程では、最終面接の前に、そこまでの面接を通した人事担当者が「アドバイザー」として1対1で学生に付き、学生が会社を選ぶ軸を整理します。「その学生にやりたいことがあるか」、「やりたい内容は、LIFULLのビジョンとベクトルが合うものなのか」など。整理した上で、条件に合致する人だけ最終面接に参加していただく。優秀な人でも他社がふさわしいならば、他社をお勧めすることもあります。

また、媒体へ出稿する際は、ベンチャー志向の強い人が集まっている求人媒体を敢えて選んでいますし、採用イベントや紹介会社も同様です。人材を「自燃型」「可燃型」「不燃型」等とタイプ分けした場合、私たちは自燃型かつ周りにも火をつける「点火型」の人材が欲しい。そういった人は、一般的な学生が顔を出さないイベントに参加するなど、より自分の希望に近しい情報を積極的に集めています。そういう情報収集力・行動力があるかどうかで、自然と最低限スクリーニングされると考えているからです。

ストーリーを通して、わかりやすく明確な職務定義を伝える

受け答えをする羽田さん

──採用経路の割合はどのようになっていますか。

中途採用に関しては、紹介会社さん経由が8割を占めています。そこで紹介会社さんと積極的にコミュニケーションをとり、説明会を開いたり食事に行ったりするなど、弊社の文化を深くご理解いただくようにしています。

全体の応募者数から見ると自社の採用サイト経由の応募は多くないですが、マッチング率は高いですね。 ジョブディスクリプションを、その部署と何度もやりとりをして、転職市場に実際に希望するような人材がいるかどうか、人事担当が市場感を伝えながら詳細に掘り下げて書くようにしています。また、なぜこの部署がこのような人を求めているのか、何に困っていてどう助けてほしいのか、ストーリーを含めてわかりやすく明確な職務定義を伝え、入社後に「挑戦」したくなる採用を心がけています。

「だれと、なにを、なんのために」が大切

社内の様子

──いま、採用において課題と感じることはありますか?

年間70〜100人くらい採用していますが、かなり厳選採用しているので、なかなか大変です。ただ、母集団を増やしても意味がない。100人採用するなら、我が社に合う人が100人来てくれればいいと思っています。合う方100人とお会いしたい(笑)

現在、採用も含めてチーフクリエイティブオフィサーが統一感ある企業ブランディングを行っています。特に力を入れているのが「LIFULL STORIES(https://media.lifull.com/)」というオウンドメディア。さまざまなジャンルにおいて、既成概念にとらわれず自分らしく生きる人のインタビュー記事です。僕らが共感するのはどんな人かしっかり打ち出し、コーポレート全体の統一したメッセージを伝えています。 また拙著「日本一働きたい会社のつくり方」(PHP研究所)も採用のことを考えて書きました。これらを読んだ上で応募してくださる方が多く、マッチング率は高まっていると感じています。

先ほどもお話したように、かつて弊社ではビジョンフィット、カルチャーフィットしない人を採用してしまい社内が荒れたという失敗経験があります。
「だれと、なにを、なんのために」やるのか。これが理解しあえる人たちと良いチームをつくって、会社のビジョンを実現していきたいと考えています。

https://indeed-omrj.com/post-0028
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