“生態系の集合体”であるDMM.comが、自ら動く人材獲得に向けて実践する十人十色の情報発信力

2019/07/29
“生態系の集合体”であるDMM.comが、自ら動く人材獲得に向けて実践する十人十色の情報発信力

DMM.comグループ(以下、DMM.com)は、動画配信、ゲーム、英会話、投資、旅行など、40以上の事業を展開している。様々な部署が一つの生態系のように自律的に動いて多種多様なサービスを提供するだけにとどまらず、時代の変化を的確に捉えスピード感をもってビジネス展開を実現してきた。

採用においても各事業部が情報発信を行い、「新事業を起こしたい」という意欲を持つ新たな人材の獲得を進めてきた。一方、グループ全体で約4000名の規模まで拡大した今、求める人材を獲得するため、会社が目指すものについてメッセージを明確にする必要性にも直面。この7月には、コーポレートメッセージを制定すると共にコーポレートサイトを一新した。
採用を含めた人事施策を統括するDMM.com 人事総務本部 人事部 部長の林 英治郎氏に、自社が求める人材を獲得するためのオウンドメディア活用について、これまでとこれからの話を聞いた。

林 英治郎氏
林 英治郎氏。2008年、株式会社トライアンフにて、様々な企業の新卒採用・中途採用の企画から運用まで携わる。2012年、ソフトバンク株式会社にて、国内の販売職採用、事業部担当人事、グループ会社の人事戦略設計に従事。2017年、DMM.com社長室にて、開発体制変更に伴う人事制度の設計、導入を担当した後、現職に就任 。人・組織の力によって事業に貢献するための人事戦略全般をリード。

40を超える事業・サービスがあるため、採用プロセスも部門責任者がリード

ジョブディスクリプション

――DMM.comは、グループ全体の社員数が5、6年前までは500人前後だったのが、現在は4000人以上と急成長しています。現在の採用概況について教えてください。

DMM.comは、石川県で設立されて20年が経過しました。ここまで組織の拡大を実現してきたのは、中途採用による人員増加がメインです。多いときで年間450人前後、現在は250人前後を採用しています。

中途採用は、その時々の事業戦略を実現することや組織課題を解決することができる“即戦力性”の高い人物を採用しています。企業と個人の双方が互いのニーズを適切に理解し合った状態で、入社してくれることが望ましいと考えています。

新卒採用を本格的に開始したのは2015年です。現在、DMM.comの事業の中心となっている動画配信が1998年、FX投資が2009年、オンラインゲームが2012年にスタートしたのち、次の柱に加わる新規事業へ旺盛に投資している最中でした。東京と石川を合わせて多いときで100〜150人、現在は50人前後を採用しています。

新卒採用については、育成を前提とした事業・組織づくりをしきれていないため、DMM.comに対する期待値と実際に入社した後の体験が乖離してしまっているケースが発生するなど、まだ課題があります。こういった課題を解決することに真摯に向き合い、人材が育つ文化を醸成することで、事業・組織の成功確度を高めていきたいと考えています。

――どのような人材を採用したいと考えていますか?

DMM.comには40を超える事業・サービスがあり、立ち上げたばかりの事業からある程度成熟している事業まで、事業部ごとに必要な人材は様々です。一方で、多様な人材を活かすオンボーディングや育成施策に関して十分とは言えない部分がまだあり、加えて組織としては変化し続けることを志向しています。そんな混沌としている環境でも自らチャレンジし、周囲の助けを上手く引き出しながら自律的に課題解決に向き合える人材に、新卒中途問わず仲間になってほしいと思っています。思考の多様性を活かすことで、事業成長をより加速させられる組織にしていきたいですね。

――欲しい人材を採用するために、面接などで実践されていることはありますか?

採用プロセス自体が、入社後の実体験と近くなるように意識しています。そのために、ポジションごとに部門担当者や事業責任者が採用の意思決定をリードできるよう、採用担当者は関与します。採用の成果は、入社後の活躍までを実現することにあると考えているので、期待値と実態にズレが出ないように気を付けています。

特にエンジニア領域では、採用にも高い専門性が必要なため、文脈や特徴を把握している現場メンバーが採用に関わりやすい体制を、人事部が整えるようにしています。

ジョブディスクリプションは、応募者の方にとって具体的な情報を最初に拾う媒体となるのでとても重要です。分かりやすく、内容の過不足がない情報を記載しています。

動画を積極的に活用した、社員の顔が見える情報発信

動画

――グループ全体でいろんな事業を行うなか、採用に関して情報発信するうえで重視している価値観は何でしょうか?

たくさんの事業・サービスがあるということは、DMM.com全体としての可能性や面白みを感じる一方で、何をしている会社かわかりにくいことでもあります。また、ビジネス展開のユニークさや、亀山敬司会長 兼 CEOの人柄が第一印象として強く、「面白そう」、「自由そう」といった、間違っていないけれど偏った印象を持たれることも多くあります。

情報発信するときは、無用に飾らず、課題も含めてありのままに伝えるよう意識しています。特に自社メディアで情報発信する際は、派手なことや綺麗なことではなく、試行錯誤していることや着実に実行していることなど、リアリティのある情報の発信を心がけています。

――採用サイトに掲載されている社員インタビューでは、企業文化や社風やキャリアパスなどを効果的に伝えられています。特に動画での情報発信に力を入れているように見受けられます。

動画やテキストは、目的によって使い分けています。

動画は、情報量を多く届けることができます。温度感や雰囲気など、テキストでの表現が難しい情報を含めて、動画で伝えられればと考えています。また、対面でなく動画で伝えられる場合は、動画の活用がお互いにとって合理的だと思います。たとえば、新卒採用の対面説明会はなくし、採用候補者がウェブ上で必要な情報を得られるように、様々な職種や年次の社員インタビューを準備しました。

一方、経営戦略や人事施策などに関してタイムリーに発信していきたい場合は、テキストでしっかり伝えています。

もっともっと情報発信を行うことで、社内外に対する透明性を高めていきたいと思っています。そういう意味では、DMM.comの社員一人ひとりの顔が見えるような情報発信をより強くしていきたいですね。

オウンドメディアでは“DMMの空気感”をまるごと伝える

オウンドメディア

――オウンドメディアである「DMM inside」では、テクノロジーやカルチャーという切り口を設け、DMM.comの内部により深く切り込んだ情報発信をされています。オウンドメディアで自社のカルチャーコンテンツを発信することの意味をどう考えていますか? また、オウンドメディアの情報発信は、社内にどのような影響を与えていますか?

DMM insideは、エンジニアやデザイナーがそれぞれの職能で運用していたブログ群を統一し、メディアとして立ち上げました。当初はDMM inside編集部が企画を考えて記事を作っていましたが、しばらくして社員自らが自分の体験や仕事・成果を社内外に発信したいと希望し、記事執筆を行うケースが増えてきました。また、採用担当が特定部署や職種の特集記事を連載するなど、使い方にもバリエーションが出てきたと思います。

外部メディアのようにクオリティやトンマナが管理されているものとは違い、DMM insideは記事によってバラつきがあるかもしれませんが、その空気感がまるごと伝わることが自社メディアの存在意義だと思っています。基本的に社外向けの発信ではあるものの、社内で「あの記事見たよ」と言われたり、社内のチャットでDMM insideの記事が共有されたりするなど、結果として社内コミュニケーションの活性化にもつながっています。

今後は、各社員が個々に情報発信することに寄与する媒体にしたいと考えています。そもそも発信したくなる会社にしていくことも重要ですし、当たり前のようにみんなが発信してくれる空気感も醸成していきたいです。

DMM.comには様々な事業に応じた多様な人材がそろっているため、一人ひとりが自分の言葉で語ることで、リアリティのある情報を届けられるようになると考えています。いいところも改善すべき点も、生々しく発信することに価値があると思います。

――DMM.comは「亀チョク採用」、「DMM Global採用」、「DMM .Africa」など、新規事業の立ち上げに特化した採用サイトを別途設けて、情報発信していらっしゃいます。

多様な事業展開をしていると、それまでのPRと地続きではない取り組みもでてきます。それを「全体感を損なってしまう」という本質的ではない理由でやめるのではなく、サイトを別途設けて情報発信することがあります。

採用サイトは「正面玄関」、オウンドメディアは「いろいろな旗・目印」、特設採用ページは「離れ」のようなイメージでしょうか。全体でDMM.comの世界観を形づくる意識をもって、バランスを維持していきたいと考えています。基本的にはDMM insideを経由して情報を発信し、蓄積していくようにしています。

人事だけに閉じず、マーケティング・経営など社内の知見を生かす

リファラル採用

――採用広報においてSNSによる情報発信も実践しています。SNSやリファラル採用については、どのように考えていますか?

リファラル採用の促進は重視しています。まずは、そもそも紹介したくなるような会社にしたり、社員が成長できる機会を増やしたりしていくこと大切です。同時に、採用に関わる部門メンバーとリファラル採用について意見交換する会議体を設け、「採用人数の推移」や「うまくいった事例」などについて話し合っています。事業を横断して様々な状況を把握するのは難しいですが、定点で数字を見ながら会話することで、リファラル採用の施策も改善し続けたいと考えています。

最近では、リファラル採用経由の入社比率が50%になったこともありました。この水準が恒常的になるように、地道な取り組みを継続していきたいと思っています。リファラル採用は会社の実態を理解している社員を経由して応募し入社するため、互いの期待値が合致する確率が高いですね。

――現在は、採用活動に、経営やマーケティングなどの知見を取り入れることの重要性が指摘されます。採用に関する社内連携は、どのように取り組まれていますか?

人事領域を担当する人事部と、メッセージ発信を担当するコーポレート室が連携しています。たとえば、採用広報に関する施策においても、社内外のコミュニケーションに関してはコーポレート室からフィードバックをもらいます。また、経営企画室に所属しているマーケティングの知見を持つ社員に企画検討時点から加わってもらうなど、人事部だけに閉じないようにしています。

――社内連携を積極的に行っているのは、林さんが社長室に所属していた経験も大きいですか?

そうですね、大きいと思います。事業の動きや経営層の関心を知る機会が多くありましたし、専門性の高いメンバーがそろっていました。私が人事部になってからも連携しやすいですし、今も経営企画メンバーと一緒になる定例ミーティングがあります。

常々、メンバーに対しても、社内外に優れた人材が多いのだから協力し合っていこうと 言っています。外の勉強会に行ったらサマリーにしてメンバーと共有したり、データ分析やマーケティングに詳しい社員の考え方を人事に取り入れたり、人事部メンバーが起点になって意識的にいろいろな人を巻き込むようにしています。多様な経験、知識を持つ社員が必要なタイミングでつながることができれば、企業としての底力が上がっていくと思います。様々なバックグランドを持った社員が集まっているDMM.comならではのシナジー効果を高めていきたいと考えています。

――DMM.comは、この7月にコーポレートメッセージと、採用サイトを含むコーポレートサイトを一新されました。その背景について教えていただけますか?

DMM.comは、この数年でグループ全体で4000名を超える規模に、まさに急拡大してきました。急激に規模が拡大すると、社内では縦・横・斜めでコミュニケーションロスによる情報やモチベーションのギャップが生まれがちになります。また、非上場ということもありますが、40を超えるサービスを展開していると、社外からは実体が見えづらくなってしまった部分もあるかもしれません。

そこで、DMM.comという会社がどのような会社なのかを社内外両方に向けて言語化する必要が出てきたため、DMM.com全体のアイデンティティを示すコーポレートメッセージとして「誰もが 見たくなる 未来。」を制定しました。

さらに、DMM.comという会社に集まって欲しい人の要素を「5ESSENCE」として定義しました。これによって、DMM.comという会社の外からの見え方や自分たちの仕事のあり方が、形作られていくのではないかと考えています。

・「本気の失敗を肯定する。」
・「テクノロジーとともに。」
・「誠実であれ。」
・「ちゃんと稼ぐこと。」
・「好奇心を忘れない。」

――今後取り組んでいきたい課題はありますか?

採用広報においては、社員一人ひとりが発信する場面を増やしていきたいです。DMM.comはコンシューマー向けのサービスがあったり、CM展開を多くしていたりしたことから認知度はありますが、「自分自身が働く会社」としての認知はまだまだ十分でない状態だと思っています。

社員一人ひとりの発信する情報を通じて、求職者が「自分の価値観やニーズと合うかもしれない」と感じられる機会を増やしていきたいです。それにより、個人と企業が互いの期待値を高い水準でマッチさせた状態で出会う機会が増えていくと考えています。

https://indeed-omrj.com/post-0047-2
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