リアルイベントを通して“素顔”と“情熱”を伝える、一休のオウンドメディアリクルーティング実践法

2019/11/27
リアルイベントを通して“素顔”と“情熱”を伝える、一休のオウンドメディアリクルーティング実践法

高級ホテルや旅館の予約サイト「一休.com」、および、ワンランク上のレストラン予約ができる「一休.comレストラン」の2軸を中心に事業展開を行っている一休。2016年にヤフー傘下となり、第二創業期を迎えた。一休のブランド力が大きいとはいえ、この業界は競合がひしめき、採用も他社との差別化が必要になる。試行錯誤の末に辿り着いた、一休流のイベントを通したオウンドメディアリクルーティング活用法について、一休 執行役員 CHRO 管理本部長の植村弘子氏に話を聞いた。

植村弘子氏
植村弘子氏。新卒でエスビー食品株式会社に入社。コンビニエンスストアチェーン本部セールス 兼 PBブランド商品企画を担当。2006年10月より株式会社一休にジョイン。一休レストラン、一休.comのセールスを経て、カスタマーサービス部門でコールセンターの立ち上げ、改革を実施。2016年4月より執行役員CHROに就任、2016年7月から現職の執行役員CHRO管理本部長。

試行錯誤を経て、一休らしさを伝える最適の方法としてイベントを開催

「企業理念」

――一休は、上質な宿やレストランなどのWeb予約を通して「こころに贅沢」な時間を世に増やすことを理念として掲げていますが、その企業理念と採用の関わりについて教えてください。

おっしゃる通り、一休.com、一休.comレストランとも「こころに贅沢させよう」という企業理念を目指してサービスを提供することが大元にあります。そこに向かうため、私たちがモットーとして行なっていることが「ユーザーファースト」です。これはどこの会社も言っていることかもしれませんが、一休ほど言っている会社はないと思うほどです。この言葉は全スタッフに浸透しており、日常会話にも出てきますし、誰もが「私たちの行動はユーザーファーストなのか」と常に考えながら業務を行なっています。

採用においても、「ユーザーファースト」「Beプロフェッショナル」「チームドリブン」の3つをポイントとして見ています。「自分はこうしたい」という話ばかりする人はユーザーファーストの考え方にはそぐわないと考えています。また、一つひとつの事柄にオーナーシップを持てる人材かどうか、チームで仕事をすることに向いているかどうかを、採用の判断基準にしています。

――そうした考え方を求職者に知ってもらう手段として、リアルイベントに注力されていると聞きました。

おっしゃる通りです。経緯を説明しますと、以前は採用で苦しんでいました。一休.comというサービスのイメージから、「ホテルが好き」「旅行が好き」という方が多くいらっしゃってくださった。ただ、社内のマインドはどちらかというとベンチャーマインドの色が強く、一休.comのイメージとは異なっています。

どうすれば私たちが本当に求めている人材と出会えるのだろうか、という課題を持つなかで、最終的にイベントに行き着きました。

――リアルイベントに注力することに決めた背景には、どのようなことがあったのでしょうか?

2016年にヤフー株式会社へジョインしてから、事業が加速するのが早くなり、フェーズが変わりました。ヤフーという大きな会社と一緒になるからこそ、一休のカルチャーをより強く世の中に出す努力をし、採用もしていかないといけないという考えがありました。

そこで、WEBマガジンのTABI LABOさんと組んで、「変人急募!!」という採用イベントを開催しました。特殊な変人と、変えてくれる人、変わりたいと思っている人を募集するというコンセプトでイベントをしたところ、たくさんの応募者が来てくれたのが最初です。

そのうちイベントは、人事部や他の事業部に限らず、全社みんなで取り組んでいくのが当たり前になって現在へ至ります。社長をはじめとする経営陣は必ず参加し、かつ仲間たちが全サポートしており、人事部だけで開催することはありません。できる限り我々のカルチャー、サービスの課題感、挑戦していることを、ワークショップやプレゼンテーションなどでわかりやすくお伝えし、帰りに「もう一回話が聞きたい」「働いてみたい」と思っていただけるように努めています。アンケートを取ると、99%が「満足」か「大満足」という結果になっています。

イベントと社員をオウンドメディアとしてフル活用し、採用サイトとも連携

「イベント」

――イベントが一休にとって一番適したオウンドメディアだったわけですね。イベントを知ってもらうにはどのような手段を使っていますか。

私たちが出会いたい人がいらっしゃるところにお知らせできるよう、常に媒体を探している状況です。NewsPicksさんとはこれまで2回、一緒にイベントを開催しました。記事に対する20代の読者のコメントなどを見て、感度が高く、かつチャレンジしたいという方が多いのではないかと予測しました。弊社から問い合わせたところ、実際に新しいことに挑戦したい方、起業志向が強い方がいらっしゃったので、私たちに合っていましたね。

――イベントではどのようなプログラムを行なっていますか。NewsPicksさんと一緒に企画したのですか。

そうですね。代表取締役社長の榊(淳氏)も含めて、お互い議論して決めました。最終的に実行されたものが、最初のアイデアからまったく違うものに変わったこともあります。このほうがもっと伝わるのではないか、もっと面白いのではないか、と議論を重ねました。

ポリシーとして、こちらの一方通行的なプレゼンテーションはしたくないと考えています。2018年に開催したイベント「時価総額100億円→1000億円V字回復を叶えた経営思考」も、まず一休のことを榊から紹介し、その後、どのようにして時価総額を100億円から1000億円にしたのか、榊の思考方法についてのワークショップを行ないました。

1時間半と長い時間考えるのでかなり疲れますが、実際に弊社に入ると常に思考が問われます。そうであれば、ワークショップをしっかり体感してもらうことで、一休を知ってもらうことに近づくと思いますし、いずれ事業責任者になる方を募集していたので、そういう思考を持った方に来てほしいという思いもありました。

各グループは4〜5人で構成され、会話が進まなかったり悩んだりしたら、各テーブルに配置された社員がヒントを出しながら、一休の思考を共有しています。さらに、設定した質問の時間でもすべての質問に答え、懇親会でも質問に答え、イベントは夜11時くらいまで行ないました。

――まさに社員がオウンドメディアとなっているわけですね。イベントで社員と参加者が会話するときも、「ユーザーファースト」といった企業理念の話が出ますか。

最初に榊が会社紹介で言うことが多いですし、その後個別に質問をしているときにもポリシーをしっかりお伝えしています。アンケートでも、「心に残った言葉」として「ユーザーファースト」を挙げる人も多いです。社員全員の意識に当たり前に入っている言葉なのでわざわざ伝えているわけではありませんが、ワークショップの中身自体、それがテーマとなっています。

――イベントがあった後に面接して、採用となるケースもありますか。

席数に限りがあったのでイベントに参加していただく時点で選考させていただき、イベント当日にアンケートを取って、「弊社に興味がある」「もっと知りたい」と考えてくださっている方にご連絡しました。その後は、通常の採用と同じプロセスで、入社に至った人もいます。

――過去の採用手法に比べると、採用がうまくいったという実感はありますか。

採用に正解はないので、コスト重視、効率重視の会社からすれば、最適な方法ではないかもしれません。ただ、弊社においては、今の一休を一番よく伝えられるシンプルな方法だと考えています。イベントも突然開催したわけでなく、その前にNewsPicksさんで、榊や取締役会長の小澤(隆生氏)、若手社員のインタビューを掲載し、読んで共感してくださった方に来てもらうという流れを必ず取っています。

2019年は、Forbes JAPAN CAREERさんで、5人の執行役員のインタビューを掲載しました。その上で、入社から1年、リーダーに昇格してからわずか3か月で執行役員 宿泊事業本部長に就任した栗山悟の、思考プロセスを体感できるワークショップ「事業責任者を体感する、超濃密ワークショップ」を開催しました。就任当時の栗山の苦悩や様々な判断はリアルに起きたことなので、自分が事業部長になったら毎日行うことを知っていただける機会になったと思います。NewsPicksさんとForbes JAPAN CAREERさんとでは読者のタイプも違うので、その点も意識して企画しました。

――メディアに出した記事は、採用サイトにも活かしていますか。

採用サイトにURLを掲載して、記事を読めるようにしています。また、NewsPicksさんの記事は、許可を得てパンフレットにしました。イベントのときにお持ち帰りいただいたり、一次面接のときにお渡ししたりして使っています。

採用サイトでは社員のパーソナルな部分も交えて、一休の“素顔”を伝える

「ジョブディスクリプション」

――イベント参加者が御社に興味を持った際、採用サイトを参考にすると思います。採用サイトではどのように情報発信をしていますか。

弊社に興味を持っていただいた方は、採用サイトも参考にしていただいていると思います。最近、採用サイトをリニューアルしました。それまでは「伝わっていない」「もっと伝えないとならない」という課題感があったので、費用と時間をかけて改善しました。求人サイトを利用する求職者が増えれば増えるほど、自社の採用サイトもよく見られているという実感があります。求人サイトの影響は大きいですね。

――どのような観点でリニューアルされたのでしょうか。

一休のありのままの姿を伝えて、求職者のイメージとギャップが出ないようにすることは強く意識しました。できる限りリアルな状況が伝わるように、社員インタビューでは人が見えるように、仕事の中身だけでなくパーソナルな部分もわかるようにしています。他の媒体で出している記事も、正直なところが伝わってほしいと思っています。

ジョブディスクリプションも、求職者のイメージとのギャップをなくすために、細かく記載する努力をしています。まずは現場が作って、人事部で確認しています。

私が事業部出身というのもあると思いますが、採用というプロジェクトをよくするために部門を越えて一緒に動いています。採用はチームの仲間を増やすことなので、人事の仕事ではなく、全員ワンフィールドです。基本的に、リアルイベントでも採用サイトでも面接でも、伝えたいことも社員の取り組みも、やっていることは同じです。

面接でも決められた時間内で終わらせるのではなく、お互い納得がいくように話したいだけ話しているので、3時間かかることもあります。マーケティングの採用には一次面接から榊が入ることもありますし、できることはすべて行うという感覚です。

そのような方法は効率が悪いと思うこともありますが、結果的には一番いいと考えています。一休のことをきちんと理解されずに入社すると、入ってからお互いに苦労します。なので、その前に時間をかけて、正直に伝えようとしています。

それがどう伝わるかは人それぞれだと思いますが、一休が一番大切にしていることは一生懸命に事業をやることです。そのために、全社員が「ユーザーファースト」に向かっています。みんなにとって事業がやりやすく、かつ結果が出やすい組織を作るため、年功序列ではなく、成果を出した人が評価されるカルチャーが育まれたのです。

変化の激しいIT業界で生き抜くための新たな人材を、情報発信により獲得

「採用ブログ」

――宿泊とレストランの予約事業という両輪で拡大していますが、今後、どのような人材を求めていますか。

データサイエンティストを求めています。人数よりも質の高いプロフェッショナルな人が必要です。一休は、どんどん進化しているIT業界に属していて、ライバルもどんどん変わっていきます。以前は電話で予約を取るのが当たり前だったのが、ウェブに代わって、今度は話しかければ答えてくれるスピーカーが出てきています。ですので、気遣いの行き届いた本当にいいサービスを提供するためには、サイエンスの力が不可欠です。

榊自身がプログラミングやデータ分析に取り組んでいるので、データサイエンティストやエンジニアはCEO直下で働くことになります。それを面白いと思える人にはいい環境だと思いますし、そういう人が何人かいれば未来は変わると考えています。

もう一つ、レストランのウェブ予約はまだ少ないと考えています。検索するお客様は多いのですが、最後の予約は電話でしています。オンラインで即時予約までする習慣が根付くのはまだ時間がかかると思うので、この数年間はレストラン事業を中心に取り組んでいくことになるでしょう。それとともに、並行して新たな事業を作っていける仲間を求めていきます。

――エンジニアの採用に関しては、エンジニアによる「一休.com Developers Blog」もオウンドメディアの一つとなっていますね。

「一休.com Developers Blog」はエンジニアが自主的に始めてくれたものです。エンジニアやデータサイエンティストは、自分の専門性を追求したいという思いが強いので、専門的なメッセージを発信し続けることは大切だと考えています。

一休は、「いいと思うことはなんでもやってみれば」という考えの会社です。エンジニアのブログにしてもそうですし、イベントも「ミスマッチをなくしたい、だから直接会って話したい」という思いを持ち、いろいろと試行錯誤の上で開催しています。様々な採用手法がありますが、弊社としては今のところリアルに会って話すのが一番だと思っています。

https://indeed-omrj.com/post-0070
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