グローバル展開強化に向けて積極的に邁進するトリドールが、採用情報発信の核にミッションを据えた理由

2020/10/21
グローバル展開強化に向けて積極的に邁進するトリドールが、採用情報発信の核にミッションを据えた理由

トリドールホールディングスは、讃岐うどん専門店「丸亀製麺」をはじめ、20以上の外食ブランドを、世界約40の国と地域で計1700店舗以上にわたり展開し、年間の売上は1500億円に上る。1990年の会社設立から30年を超え、世界中のお客様に食を通じた感動体験を届けるため、国内外にて複数の事業・ブランドを加速度的に拡大するフェーズに入っている。これらを牽引する「人財」の成長が競争優位の源泉であるという考えのもと、「新しい価値」を自ら創造し、提供できる人材集団を目指している途上にある。

こうした背景から、従来の大量採用方針を抜本的に見直し、企業がありたい姿、ありたい人物像にマッチする人材のみを採用する方針に切り替えた。将来の幹部候補を期待する次世代リーダー社員採用、店舗運営を担う社員採用やアルバイト採用に至るまで、対象者の目線に沿ってそれぞれの採用サイトを通じた情報発信を積極的に行い、ミッションやバリューに基づく企業の価値観や求める人材像、働くメンバーなどを伝えるコンテンツを発信。2020年4月にはオウンドメディア「/toridoll」(アンドトリドール)を立ち上げ、トリドールのリアルな姿を現場発の声で伝えている。

経営戦略に事業のグローバル化と人材の成長を掲げるトリドールは、どのような人材戦略のもと情報発信を実践しているのだろうか。執行役員 CHRO 経営戦略本部 本部長 鳶本真章氏に聞いた。

鳶本真章氏
鳶本真章氏。株式会社トリドールホールディングス 執行役員 CHRO兼経営戦略本部 本部長、株式会社TDインベストメント 代表取締役。関西学院大学を卒業後、新卒で大手自動車メーカーに入社。商品企画をはじめとするマーケティング業務に携わった後、京都大学大学院にてMBAを取得。経営参謀のプロフェッショナルを目指して外資系大手コンサルティングファームに参画した後、大手グローバルメーカーや日系大手建材メーカーなどで社内コンサルティングに従事。複数のベンチャー企業支援を経た後、2018年にトリドールホールディングスへ参画。組織開発室長へ就任するとともに、組織や人材の強化育成を通じた企業の成長にコミットしている。2019年より現職。

急成長する組織が同じ方向へ進むため、すべてをミッションに戻って考える

株式会社トリドールホールディングス 執行役員 CHRO兼経営戦略本部 本部長の鳶本真章氏

――御社は日本発のグローバルフードカンパニーになることを目標に掲げています。事業を牽引する次世代リーダー社員の採用を進め、昨年移転した洗練された渋谷の本社オフィスもコーポレートブランディングの象徴として採用サイトで紹介するなど、新たな人材獲得に向けて積極的に動いています。最初に、御社が採用サイトで「Finding New Value. Simply For Your Pleasure.」というミッションを大きく掲げている理由を教えてください。

鳶本 もともとは「Simply For Your Pleasure.(=すべては、お客様の喜びのために)」というミッションがありました。それを補完する形で、2019年に「Finding New Value.」を加えて「Finding New Value. Simply For Your Pleasure.」というミッションに変更しました。「すべてはお客様のよろこびのため」「新しい価値を探求し続ける」という意味です。

当社は、35年前に代表の粟田 貴也氏( 株式会社トリドールホールディングス代表取締役社⻑)が焼き鳥店を開業したことが始まりですが、当時からずっと「お客様に喜んでいただきたい」「お客様に感動していただきたい」という想いを持ち続けており、現在も全ての根幹として存在しています。各ブランドはチェーン展開をしていますが、チェーン店と言えば「どうすれば品質統一できるか」「どうすればシステム化できるか」と効率化を考えるのが一般的です。ただ、トリドールは「どうすれば目の前のお客様に常連客になっていただいて、一つの繁盛店を作れるか」ということをずっと考えてきました。その答えが、まさに「Simply For Your Pleasure.」なのです。

そこに「Finding New Value.」を加えたのは、今まで当たり前に見えていたものの見方を変える必要があると考えたからです。今後、日本における外食市場は縮小すると言われています。また、新型コロナウイルスにより新しい生活様式が始まり、お客様の価値観が多様化するなかで、お客様にとっての選択肢はどんどん増えており、飲食店はお客様に選び続けていただく理由が今まで以上に必要になってきます。「どうすればお客様にトリドールの運営店舗にまた来ていただけるか」「私たちがお客様にご提供できる価値は何か」。それを求め続けるという意味が「Finding New Value.」に込められています。

そして昨年、このミッションを実現するために必要な5つの人材要件を示すバリュー(Toridoll-er’s Value)を策定し、今年より社内外における浸透施策に取り組み始めたところです。

トリドールはグローバルフードカンパニーとして、主力の丸亀製麺に加えて、20以上の外食ブランドを約40の国と地域に展開しています。出店エリアや業態の拡大により、多彩なバックボーンを持つメンバーが集まる大きな組織へと変化する過程では、そこをつなぐ軸となる指針を示していかないと向かうべく方向がバラバラになってしまいます。だからこそ、私たちはミッションやバリューを何よりも大切に考えています。これらの浸透には時間がかかりますが、私たちのあらゆる行動の判断軸として、常にそこに戻ることが大事なのです。逆に言えば、そこさえつながっていれば、世の中の状況に合わせて組織の形を変えたとしても行く先は変わらないでしょう。経営戦略も組織も、すべては「トリドールがどこに向かっていくのか」というミッションに基づいています

――オウンドメディアを使って、具体的にどのようにミッションを発信しようと心掛けていますか。

鳶本 「Finding New Value.」を加えた段階でいろいろな方法を考えました。社外に向けて発信する方法もあれば、社内に向けて発信する方法もあります。社外に打ち出したとしても社内で文化として醸成されていなければ、他人事として捉えられたまま忘れられてしまうかもしれません。けれども、社外に打ち出すことによって、会社は本気なんだなと自分事に思ってもらえるかもしれません。社外、社内のバランスに配慮しながらコミュニケーションを行っています。

まずは、代表の粟田と私が対談し、オウンドメディア「/toridoll」で「トリドールはミッションで何を目指しどんな集団になっていくのか」という特集を組んで発信することから始めました。

「/toridoll」の特集記事
代表の粟田氏と鳶本氏の言葉が吹き出しで表示されるなど、読みやすくする工夫がされている

また、人材開発や広報を中心にミッション・ビジョン・バリューの浸透プロジェクトを進めています。まずは社員にこれらが自分自身と常に併走する存在であることを知ってもらうことから始めないと、理解やカルチャー形成にはつながっていかないので、まだ導入段階ではありますが、知ってもらうことから始めています。

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多様な働き手にそれぞれ最適な情報を届けるため、オウンドメディアを活用

株式会社トリドールホールディングス 執行役員 CHRO兼経営戦略本部 本部長の鳶本真章氏

――オウンドメディアとしてはコーポレートサイト、採用サイト、「/toridoll」と多方面に展開しています。それぞれの目的を教えてください。

鳶本 外食産業では一般的に離職が多いと言われますが、当社はそうしたイメージを払拭したいと考えています。そのため、入社してみて「そんなはずじゃなかった」「こんなことは思っていなかった」というギャップによる離職を減らす努力を始めています。それゆえ、トリドールはどこを目指し、どういう会社で、どういう人を大事にしているのかを可能な限り求職者にご理解いただいて、共感いただける方のみを採用することで、ミスマッチを防ぐことが重要であり、私たちの想いを直接発信できるオウンドメディアは役立っていると思います

ただ、弊社の場合は職種により人材に求める要件が幅広いことが難しい点です。店舗であれば、パートナーさん(アルバイト)には高校生も、子育て中の主婦の方も、シニアの方もいらっしゃいますし、社員もいます。本社の中途採用であれば、会社の成長を牽引する次世代リーダー社員もいます。それぞれが弊社に何を期待しているのか、弊社がそれぞれにどんな能力を発揮していただきたいかは人によって違います。そうすると伝えなければいけないメッセージの根幹は一緒でも、表に出てくるものは変わってきます。そういう観点で、それぞれの採用サイトを使い分けています

「/toridoll」はどちらかというと採用ブランディングという外向きの目的もありますが、社内で起こっていることを提示して企業の理解浸透や社員同士の距離感を近づけたいというインターナルブランディングの目的もあります。たとえば、経営陣が今どういうことを考えていて、どういう取り組みをしているかをよりわかりやすい記事で伝えたいわけです。

制作には外部のライターさんにも携わっていただいていますが、ほとんどの記事は社員が自分の言葉で書いています。より近しい存在である社員が記事を書くことで社内に伝わりやすくなる面もあります。たとえば、新型コロナウイルスによる雇用調整助成金について法律の専門家に解説いただくと、どうしても専門用語が中心となり、言葉が難しくなってしまうじゃないですか。社内の人間が専門家に聞いて書くことによって、関心の高い情報を優しい表現で伝えることができるので、わかりやすくなります。

オウンドメディアの利点は、誰に何をどう伝えたいのかを自分たちで臨機応変に設定できるところですね

――オウンドメディアを通して採用に関する情報発信をしたことで、どういった効果がありましたか。

鳶本 人材やプロジェクト、イベントなど様々な切り口でトリドールの情報発信を継続することで、候補者の方に会社のことを理解した上で面接に来ていただけるようになりました。初期のころは1次面接で1時間ほど会社の説明をしなければなりませんでした。というのも、丸亀製麺は知っているけどトリドールは知らないという方が多かったからです。何も知らない状態で「この会社はどういう会社なんだろう」と思うのではなく、ポジティブな意味で「実際はどういう会社なんだろう」と思って面接に来てもらえるようになったと思います。

――オウンドメディアによって応募者や採用に至る人数は増えましたか。

鳶本 母集団は増えましたが、採用人数は追いかけていません。数をKPIにしてしまうと、「トリドールがいい」人ではなく、「トリドールでいい」人を採用することになってしまうからです。入社前からミッションやバリューに共感いただき、「トリドールがいい」という人を採用しようとしているので、採用のミスマッチは減ってきていると思いますね

「欲しい人材像」を明確化するためにペルソナを活用する方法はこちらへ

経営と人事が連携して会社の行く先を提示し、人事を守りから攻めへ変える

「/toridoll」のトップページ
「/toridoll」では社員が執筆する記事を多く掲載することで、自社のリアルな姿を発信している

――ジョブディスクリプションを詳しく書くことで、仕事探しの検索をしている求職者とのマッチング度を高めようとしたり、ジョブ型への移行をテーマに掲げたりする企業が増えてきました。ジョブ型へのシフトについてはどう考えていますか。

鳶本 ジョブ型なのかメンバーシップ型なのかにはこだわっていません。創業時、まだ小規模の会社だったときは経営と人事は密接でしたが、会社が大きくなればなるほど経営と人事の間に距離ができてしまいます。採用の根本は、会社が目指す方向のために必要な人材を採用することなのに、会社が大きくなるとそれが見えづらくなってしまうわけです。私たちは経営と人事の関係を原点に戻し、「会社はどこに向かっているのか」「そこへ行くためにどういった組織でないといけないのか」「そのためにどういった機能や業務が必要なのか」という観点から採用を進めているので、「ジョブ型」や「メンバーシップ型」という言葉には惑わされないようにしたいですね

ジョブディスクリプションを書くためにも、「どういう事業を行いたいのか」「どういう会社にしたいか」「そのためにどういう人材が必要なのか」という本質的なところが大切だと思っています

――経営と採用を一体のものとして捉えていかなければならないという考えが、広がりつつあります。「/toridoll」では、鳶本さんと粟田社長との対談が掲載されており、経営層自ら採用に対して積極的に関わっている様子が伺えます。

鳶本 粟田は創業から事業が常に順調だったわけではありません。これまでの経験を通して、「会社が求める人材が入って活気づけば売上も上がる」「経営と人は切り離せない」ということを実体験として知っています。

こうした粟田の考え方を踏まえ、トリドールは「事業会社」ではなく「“事業を生む人”を生む会社」すなわち人材開発企業をキーワードにしています。私も役員として経営戦略本部と人事を両方見ており、人材開発企業を実行していこうと愚直に推し進めています。

その視点から見ると、人事はよくも悪くも守りが多い面があります。ともすればコストセンターと言われてしまうでしょう。しかし、会社を作っているのは人です。100点の戦略を立てても、実行する人や組織が脆弱だと50点になってしまいます。逆に戦略が60点でも、それを回す組織や人が強ければ100点にも120点にもなります。会社にとって重要な人材に入社いただいて能力を発揮してもらえば、人事はプロフィットセンターになるのです。

人事を守りから攻めへ、根本的に変えていかないとなりません。そのためには会社の行く先を提示しないといけないのです。自分たちの大事な想いは自分たちの言葉で伝えたいので、オウンドメディアを使って広めていきたいと思っています。

https://indeed-omrj.com/post-0097
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