採用業界のトップランナーがニューノーマル時代の採用を語る【オウンドメディアリクルーティング研究会】(前編)

2020/12/07
採用業界のトップランナーがニューノーマル時代の採用を語る【オウンドメディアリクルーティング研究会】(前編)

激動の時代となった2020年、オウンドメディアリクルーティングはどのように変化しているのか。

Indeed Japan代表取締役 / ゼネラルマネジャーの大八木紘之をモデレーターに、サイバーエージェントの曽山哲人氏、ソフトバンクの源田泰之氏、サイボウズの青野誠氏、元「リクナビNEXT」編集長でルーセントドアーズの黒田真行氏が、採用戦略の設計からサイト制作、コンテンツ運用に至るまで、その最前線を語り合った。今回はスペシャル座談会の前半をお届けする。

写真は座談会の参加メンバー
左からルーセントドアーズ株式会社 代表取締役 黒田真行氏(以下、黒田)、ソフトバンク株式会社 人事本部 副本部長 採用・人材開発統括部 統括部長 未来人材推進室 室長 グループ人事統括室 室長 源田泰之氏(以下、源田)、株式会社サイバーエージェント 常務執行役員 CHO 曽山哲人氏(以下、曽山)、サイボウズ株式会社 人事本部 部長 青野誠氏(以下、青野)、Indeed Japan株式会社 代表取締役 / ゼネラルマネジャー 大八木紘之氏(以下、大八木)。

求職者は増えている。今こそ「厳選採用」できる機会

黒田真行氏
黒田真行氏

大八木 まず、世の中や自社の採用活動を振り返っていただき、変化や印象的な出来事をお教えください。

黒田 新型コロナウイルス感染症のショックで、特に2020年7月以降は求人が激減したので、逆に人を採用したい企業からは「買い手市場になったんじゃないか」という声もありますね。

源田  全体的にそうですよね。その分、採用している企業にとっては、非常に優秀な人材と出会いやすくなっています。

青野  私は今こそ「厳選採用」ができる機会だと見ています。実際、中途採用の応募数は増えています。実はサイボウズでは初めてテレビCMを大々的に行ったのですが、2020年7月に創業以来過去最高の応募数となりました。オンライン説明会もオフラインよりも集客がいいですね。

大八木紘之氏
大八木紘之氏

大八木 私は2020年の6月まで米国Indeedに在籍していたのですが、アメリカではコロナの影響で失業者が増えたため求職者が急増しています。一方、日本はアメリカと比較して失業者が少ないにもかかわらず、Indeedのサイトへのアクセス数は増えていることから転職希望者が増えていることがわかります。今回の出来事をきっかけに「生き方」や「働き方」を考え直したという人が増えているのかもしれません。

黒田  2020年はコロナ禍の影響が強く出ましたが、この過去10年ほどの変化で言うと、転職関係の口コミサイトが一般化し、求職者の情報リテラシーが急激に進化してきています。情報の非対称性が崩れてきていて、転職経験はそれほどなくても求職者が手に入る情報が増えているので、企業が「選ばれる」ようになりました。

曽山 求職者に届く情報が多面的になっていますね。会社発信や、個人発信、口コミサイト、友人のネットワークも。

求職者への情報発信は、「企業」から「個々の社員」へ

青野誠氏
青野誠氏

青野  情報の多面性で言うと、弊社では長期的に自社のメッセージを発信している「サイボウズ式」を運用しており、近年は評価をいただけるようになっていました。しかし今年はそのコンテンツではなく転職してきた社員による個人ブログが30万PVと大ヒットしました。「僕はなぜトヨタの人事を3年で辞めたのか」というnoteの記事です。

もちろん良好な関係で転職し、前職にも許可を得た上だからできることですけどね。企業による飾ったメッセージとは違い、自分の言葉で発信したことが共感を呼んだようです。社員の個人としての発信をまとめたポータルのようなサイトを作ったほうがいいかなと思い始めています。

曽山哲人氏
曽山哲人氏

曽山 求職者は口コミサイトも含めて共感ポイントを探しているというところはありますね。この会社の考え方は共感できるかどうか、そういう部分は企業よりも経営者や社員個人の発信のほうが伝わりやすい。弊社のオウンドメディア「FEATUReS」の社員紹介コンテンツで気を付けているのが、「書かれた本人がシェアしたくなる記事か?」という点です。きれいに見せようとして凡庸な言葉にしたり、かっこいい言葉を作ったりしてしまうと、書かれた本人がシェアしたくなくなってしまう。

また、タイトルが自分の価値観と違う記事や、サムネイル画像が自分らしく写っていないものもよくない。きついことはきついと言ったほうがいいですし、大変なことも生々しいほど伝えたほうがいい。その勇気があるほど、求職者に企業のカルチャーが伝わると思っています。炎上しても、それはそれでOK(笑)。読んでいただいて「響く」人もいれば、「別の会社を探そう」という人もいる。入社してから問題が起きるより健全だと思います。ただ、誤解を生んでしまう内容は出さないほうがいいので、そういうときの判断は広報が行っています。

黒田 リアルな情報発信は採用活動におけるスクリーニングでもあるわけですね。

大八木 求職者は社員のリアルな声に魅力を感じて入社し、実際会って話してさらにエンゲージメントが上がる。そこまで含めて仕掛けられるといいのでしょうね。

情報発信でホームランは狙わない。小さくても始めることが大切

源田泰之氏
源田泰之氏

源田 また、急速にリモートへ移行する働き方をタイムリーに発信できる速報性もメリットだと感じました。その反面、コンテンツ発信の難しさも感じています。ソフトバンクはいろいろな事業があり、役割もたくさんあります。全員の働き方を載せるわけにはいかないので、求職者が知りたいものは、どの職種のどの年齢層のどんな情報か、ある程度予測をつけて出していかないといけない。そのターゲット合わせが難しい。

曽山 だからといって万人受けを狙うと、誰にも伝わらない。「PVを稼ぎたいのでウケる記事にしよう」と思うと、残念ながらスベるものです。私は2004年からブログを書いていますけれども必ずそう(笑)。

マーケティングの用語で、私が最近大事にしているキーワードは「Prime Prospect(プライム・プロスペクト=優良な見込み顧客)」。「この記事は社会人3年目のどんどん手を挙げて新しいチャレンジをしているような人に見てほしい」というように、具体的な1人をイメージしたほうが結果的に記事の反応は良くなります。

青野 そもそもオウンドメディアは乱立気味でいろいろなコンテンツがあるなかで、ホームランを狙うのは無駄に終わる可能性が高いと私は思います。もし情報発信に対して構えてしまうということであれば、まずは社員のSNSなど小さいところから始めてみる、という方法もいいかもしれませんね。

源田 私も、いつも社内で「とにかくやってみようよ」と言っています。まず一歩を踏み出して、改善点があればPDCAを回して試行錯誤しながら続けていけばいい。運用体制などを一生懸命に組み立てるより、担当者1人でもやってみることが大事です。

スペシャル座談会の後編はこちら

※取材は十分な感染症対策の上で行いました

https://indeed-omrj.com/post-0105
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この連載の記事一覧
  1. 採用業界のトップランナーがニューノーマル時代の採用を語る【オウンドメディアリクルーティング研究会】(前編)
  2. ジョブ型とメンバーシップ型――トップランナーが語るニューノーマル時代の採用【オウンドメディアリクルーティング研究会】(後編)
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