ジョブ型とメンバーシップ型――トップランナーが語るニューノーマル時代の採用【オウンドメディアリクルーティング研究会】(後編)

2020/12/07
ジョブ型とメンバーシップ型――トップランナーが語るニューノーマル時代の採用【オウンドメディアリクルーティング研究会】(後編)

オウンドメディアリクルーティング研究会によるスペシャル座談会の後編。「オンラインでの採用施策は『リアリティ』が鍵」「ジョブ型とメンバーシップ型は、ANDで統合すべき」など、採用業界のトップランナーたちが、採用の最前線を語り合う。

スペシャル座談会の前編はこちら

写真は座談会参加のメンバー。
左からルーセントドアーズ株式会社 代表取締役 黒田真行氏(以下、黒田)、Indeed Japan株式会社 代表取締役 / ゼネラルマネジャー 大八木紘之氏(以下、大八木)、株式会社サイバーエージェント 常務執行役員 CHO 曽山哲人氏(以下、曽山)、ソフトバンク株式会社 人事本部 副本部長 採用・人材開発統括部 統括部長 未来人材推進室 室長 グループ人事統括室 室長 源田泰之氏(以下、源田)、サイボウズ株式会社 人事本部 部長 青野誠氏(以下、青野)。

急速なオンライン移行が進むなか、いかに「リアリティ」を伝えるか

青野誠氏

大八木  ニューノーマル時代の到来と言われていますが、オウンドメディアリクルーティングにおいてはどのような対応が必要とお考えですか。

青野 「受け皿イベント」と「オンボーディング」の2つを用意したいと考えています。情報発信をしたときに、応募者は疑問を持つと思うんですね。その解消はオンラインイベントだけでは難しいため、「受け皿」となるリアルな場も作っています。具体的には「1時間で100~150個ぐらいの質問にとにかく応える」というイベントが好評です。

もう一つの「オンボーディング」は、「入社後どのようにして会社の一員になれるのか」という不安を解消するもの。弊社ではエンジニアの新卒研修で使う資料を公開していますが、「オンラインでもしっかりトレーニングしてくれる」という安心感につながっているようです。

曽山 オフィスに行けないからこそ、「ファクト」と「リアリティ」を意識しています。まず「ファクト」は、とにかく具体的な数字を出すこと。たとえば、20代の求職者には「若い社員が多いです」よりも「社員の7割に当たる100人ぐらいが20代です」というように具体的な数字を出す方がピンときます。

「リアリティ」をどう伝えるかについては動画による解決を目指しています。現社員がどんな仕事をしているのか、話しているときの目や口の動きが見えることで、機微が伝わるんですよね。動画の活用はこれからもっと進んでいくでしょう。たとえばYouTubeで新しく「曽山ちゃんねる」を作って、人事や求人の話をしてもいいかなと考えています。人事の動画チャンネルはあまりないので。

大八木 青野さんがおっしゃった「小さく始めてみる」(座談会前編)という点でも、スマホで撮れるようなものならコストをかけずにコンテンツを提供できそうですね。

オンライン面接は採用のスタンダードになるか

大八木紘之氏
大八木紘之氏

大八木 もう一つ新しい話で言うと、面接のオンライン化です。米国Indeedでは今まさに、オンラインのインタビュー支援サービスを行っています。企業側が求職者の履歴書を並べて見られたり、インタビュー前に質疑できたりするなど、今回のコロナ禍をきっかけに多くの人が取り入れるようになりました。皆さんの「面接」の状況はいかがでしょうか。

曽山 サイバーエージェントでは基本的にオンラインで行いますが、最終面接もしくは入社する前に1度リアルで会うようにしています。

青野 サイボウズも同じです。しかし、リアルで会う目的は「判断する」というより、「会社の雰囲気」を見てもらうこと。相手を惹きつける意味も含めてです。

源田 ソフトバンクでは現在、すべての選考過程がオンラインで完結しています。過去の新卒採用だと、面接評価と入社後の活躍の相関性が出ているのですが、オンライン面接で同じように相関性を持って活躍してもらえるか、結果が出るのが数年後なのでわからない。ただ面接の感触だと対面と大きく違うということはないように感じます。

青野 それは感じます。ただ、ご本人の納得感はどうなのかですね。

曽山 求職者側のオンラインへの不満度は高いですね。「もう1回面接させてください」という連絡が何件かありました。通信環境によって落とすことは絶対にないけれど、本人は「そのせいだろうか」「伝えきれなかった」と考える。

青野 求職者のケアがいっそう必要になってくると思います。

ジョブ型か、メンバーシップ型か、どちらかではなく統合すべき

黒田真行氏
黒田真行氏

大八木 HR業界では現在、「ジョブ型雇用」というキーワードが話題になっています。皆さんはどうお考えでしょうか。

黒田 日本独自の総合職がメンバーシップ型だと思いますが、コロナ禍によるリモートワークへの移行によって社員がセルフマネジメントをしなければいけなくなり、ジョブ型がクローズアップされた背景もあると思います。

曽山 どちらかじゃないんですよね、「ANDで統合」していくことが大事。サイバーエージェントはチームを大事にするのでメンバーシップ型の側面もありますが、たとえば中途採用ではジョブ型に近いです。

青野 ジョブ型雇用かどうかというより、「本当にやりたいことは何だろう」と本質に立ち返って議論していくと、適した方法が見えてくると思います。

源田泰之氏
源田泰之氏

源田 「ジョブ型雇用=欧米型の雇用スタイル」「メンバーシップ型=年功序列をベースとした日本型の雇用」と考えると思考停止してしまう。人事の役割は会社の事業戦略に合わせて人や組織をマッチングさせて、事業にドライブをかけることです。

採用では、新しい事業がバンバン出てきて変化が激しいので、「その業務はジョブディスクリプションにないからやりません」という人物よりは、状況に合わせて柔軟に役割を担う人材を採用したい。中途採用の入り口は経験やスキルを重視するジョブ型雇用に近く、その上でカルチャーフィットや柔軟な働き方ができるかどうかを見ながら判断しています。

一方、評価については年齢・国籍・性別に関係なく、役割と成果に応じて正しく報酬が支払われることを大事にしています。ソフトバンクは過去に一度もリストラをしていないですし、個人の成長につながる教育制度もかなり充実させているためメンバーシップ型に近いといえます。目的に合わせて2つを組み合わせる「ハイブリッド型」を目指しています。

ニューノーマル時代の採用は5年後、10年後を見据えて

曽山哲人氏
曽山哲人氏

大八木 それでは最後に、皆さんが「これからの採用」のために必要だと考えていることをお教えください。

曽山 今、弊社が試しているのが採用と育成の「一気通貫」です。入社後の数年間は育成も採用部門が担当する制度で、まずは新卒採用から導入を考えています。採用担当者が採用の成果を数年間追いかけるのでモチベーションが上がりますし、フォローアップの度合いも高まります。これには採用に対する評価が重要で、従来の「調達人数」だけでは難しい。採用と育成をセットで考える経営側の意識が必要です。

源田 私は「インターン」の文化をもっと作っていきたいと考えています。現在、ソフトバンクでは年間500人程度、夏の期間1カ月ほど新卒のインターンを行っていますが、その経験を経て入社した社員の活躍が目立ちます。離職率も低いですね。もっと大学と企業が協力して推進していきたいですし、中途採用でもインターンシップをしたいと思っています。

副業をOKにしている会社が増えてきたので、平日の夜や土日などインターンとして少し働く機会があって、カルチャーや仕事内容を理解した上で転職できる仕組みがあるといい。日本はまだまだ終身雇用の考え方が強い。文化は急に変えられないので、インターンを通じてお互い納得して就職・転職できる世界になればいいなと思います。

青野 「中途のインターン」はいいアイデアですね。サイボウズでも、もっと業務委託や契約社員などの採用にチャレンジしたいと思っています。たとえば、スペシャリストやパラレルワーカーの場合、スキルが高いけれども社員としては採用しづらい場合がある。そういうときに「まず半年契約で、継続は後から決める」「週2で契約社員として採用」のような形ができるとお互いにいい場合もあります。

大八木 転職を「一生のお付き合い」と決めてしまうとお互いにハードルが上がってしまうので、そこを下げるということですね。

黒田 そもそも1時間の面接で無期雇用を決めるのは無理がありますね。

大八木 採用活動のゴールが「○月○日まで○人入社」になるとそうなってしまいますが、5年後、10年後を見据えて考え、個人の成長が企業のパワーになると信じることで採用は変わってくるのではないかと感じました。

皆さん、本日はありがとうございました。

※取材は十分な感染症対策の上で行いました。

https://indeed-omrj.com/post-0106
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この連載の記事一覧
  1. 採用業界のトップランナーがニューノーマル時代の採用を語る【オウンドメディアリクルーティング研究会】(前編)
  2. ジョブ型とメンバーシップ型――トップランナーが語るニューノーマル時代の採用【オウンドメディアリクルーティング研究会】(後編)
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