5つの事例から学ぶ、他社と差別化し自社の魅力を引き出す採用コンテンツとは

2021/03/10
5つの事例から学ぶ、他社と差別化し自社の魅力を引き出す採用コンテンツとは

これまでに寄稿した「採用サイトによくある8つの間違い」では、採用サイトを作るうえで持っておくべき基本姿勢を、「採用サイトを作る時にやるべき6つのこと」では、採用サイトを作るために行っておくべき準備や活動を、詳しく説明してきました。

こうした基本姿勢や活動が最終的に反映されなければいけないのが、コンテンツです。「採用サイトによくある8つの間違い」でもご説明したように、採用サイトでは小手先の演出などはほとんど利きません。人生をかけて就職先を探している人が、表面的なデザインでごまかされることはありません。企業が求職者に提示しなければいけないのは、コンテンツです。

本記事では、採用サイトにおける最重要要素であり、そのために採用サイトが存在しているといっても過言ではない「コンテンツ」についてのお話しです。

枌谷力氏。株式会社ベイジ代表。新卒でNTTデータに入社、4年間の営業経験の後、デザイナーに転身。2007年にフリーランスとして独立。 2010年にウェブ制作株式会社ベイジを設立。2017年にはマーケティング会社ナイルのUX戦略顧問就任。BtoBマーケティング、採用マーケティング、UX/UIデザイン、ライティングを得意分野とし、BtoB企業を中心に数々のウェブサイトを手掛ける。 オウンドメディアとSNSにも精通し、自社のマーケティングおよび採用においても大きな成果を生み出している。

差別化できない定番コンテンツ

採用サイトのコンテンツと言えば、以下のようなものを思い浮かべるかもしれません。

  • 求める人物像
  • 社長メッセージ
  • 仕事紹介
  • 社員インタビュー
  • 会社紹介
  • 募集要項

実際、このようなコンテンツだけで構成されている採用サイトは数多く存在します。確かにこれらは採用サイトの定番コンテンツと言っていいでしょう。しかし私は、こういったコンテンツしか掲載されていない採用サイトでは、不十分ではないかと考えています。

世の採用サイトは、固定観念にとらわれすぎです。上記のような定番コンテンツを配置しておけば採用サイトとして成立すると考えるのは、安易な思考停止と言えます。もちろん、誰もが知る有名&人気企業であれば、定番コンテンツだけの採用サイトでも十分機能します。しかしそれ以外の99.9%の企業は、他社と横並びではなく、他社があまり載せていない、自社の魅力をきちんと伝えられる、そして何より、求職者の不安を解消し、求職者がより強い関心を持つきっかけになる、そんなコンテンツを生み出そうと思案すべきです。

では、それはどのようなコンテンツなのでしょうか。私たちがお手伝いした採用サイトの事例などを中心に、具体的な例をいくつかご紹介しましょう。

例1:働くメリット

「働くメリット」というと、ありふれたコンテンツのように思えるかもしれませんが、この当たり前のコンテンツを掲載している企業自体が少ないというのが、採用サイトの悲しい現状とも言えます。

マーケティング目的のサイトであれば、そこで取り扱っている製品やサービスの特長や購買メリットを伝えることは、ごく当たり前のことです。この当たり前の考えに倣って、採用サイトも「企業の便益」を明確に言語化して掲載すべきなのです。採用サイトにおける「企業の便益」とは、その人の人生や生活のなかで、その会社に勤めることの意義や価値です。これを、求職者目線で伝わるように言語化します。

たとえば、ある企業が「仕事を自分の裁量で選択できる」ということをアピールしたいとしましょう。しかしそれだけでは、単に企業の仕組みを紹介しているだけにすぎません。人によっては「それが働き方や生活と何の関係があるのだろう」となってしまいます。この場合、「だから、その時の生活スタイルやライフステージに合わせて、仕事の規模や量を自分の意思で選択可能」といったように、求職者目線のメリットに転換して言語化すべきなのです。

このような、求職者目線で見たその企業の便益を一ページに集約させたものが「働くメリット」です。

私たちが手掛けたインフィールドさんの採用サイト「働くメリット」のページも、このような観点で、求職者視点になって丁寧にブレイクダウンされた情報が掲載されています。

たとえば、「イベント運営の網羅的なスキルが身につく」ことについてであれば、具体的に以下のようなスキルが身に付くと言及しています。

  • 書類や図面といった資料作成など、ドキュメンテーションのスキル
  • イベントの実現に必要な業者の手配や連絡など、プロジェクトマネジメントのスキル
  • 問い合わせ対応やヒアリング、当日の現場対応など、臨機応変なコミュニケーションスキル
  • 音響、映像、照明機材の取り扱いなど、専門的なテクニカルスキル
  • クライアントの経営層から信頼を勝ち得るビジネススキル

さらに「これらは業界や業種に左右されない普遍的なスキル」「もし仮にインフィールドを卒業して別の会社に行っても、プロフェッショナルな人材として活躍できる」と、たとえ会社を辞めることがあっても将来に渡って役立つスキルが身に付く、といったことが語られています。

このように、求職者目線で「だからなんなのか」まで書かれているため、この会社で働くことの人生や生活における意義やメリットを、求職者が短時間で理解・把握できるようになっており、これを読んで価値観が合うと思えたら、より詳しく会社を知るために採用サイトを回遊できるようになっています。

「働くメリット」は、私たちがお手伝いする採用サイトでは必ず設置している必須コンテンツです。これから採用サイトを作ろうとしている皆様もぜひ、「働くメリット」に何が掲載できるかを考えて設置してみてください。

例2:卒業生の声

例2:卒業生の声

会社を辞めた人について採用サイトで言及するというのは、ほとんどの企業がしていませんし、できればふれたくないと考えているでしょう。一方で求職者の視点に立てば、「辞めた人は、どういう理由で辞めたのか」「辞めた人はこの会社にどんなイメージを持っているのか」といったテーマには、当然のように自然と関心が湧くでしょう。

広告システムの開発・運用を行っているフクロウラボさんでは、このような求職者ファーストの観点から、採用サイトの常識を打ち破った「卒業生の声」というコンテンツを掲載しています。

意地悪な見方をする人からは、このような記事でさえ「会社によって都合がいい情報だけを掲載している」と思われてしまうかもしれません。しかし、卒業生との間に、このような取材記事を掲載できる円満な関係が築けているという一点を取っても、会社と社員の良好な関係性に対する、一つの証明になるのではないかと思います。

近年、採用オウンドメディアなどでは、その会社を卒業したOB/OGのインタビューが掲載されるケースもしばしば見られるようになってきました。手前味噌ながら、私もNTTデータのオウンドメディア『UpToData』にて、卒業生として取材を受けております(このオウンドメディアは、当社の実績ではありません)。

このように求職者目線に立ち、「こういうことはやってはいけない」という固定観念にとらわれず、柔軟に採用サイトのコンテンツを考えてみてはいかがでしょうか。

例3:私たちの失敗談

採用サイトには普通、その会社の良いことばかりが掲載されています。しかしこの世には完璧な会社などは存在せず、どんな会社でも必ず何かの問題を抱えているはずですし、多くの失敗を経験しているはずです。それは多くの求職者もわかっていることですが、それがいっさい書かれておらず、良い話ばかりで構成してしまうと、採用サイトは都合がいいことだけを書いてある広告的なコンテンツと思われてしまいます。美化された話ばかりを入社前に伝えることは、「こんな会社とは思わなかった」という入社後のギャップにもつながりかねません。

また、求職者は誰しも自分の長所だけでなく、短所もある程度は自覚しています。そのため、あまりにも完璧で高潔な印象を与えてしまうと、本当は会社にフィットする人材なのに、「こんなすごい会社には入社できない…」と尻込みしてしまう一因になりかねません。

実際、私たちが採用サイトの制作前に必ず実施しているアンケートでも、好ましい印象を持たない採用サイトの条件として、「良いことしか書いてない」「綺麗ごとばかり」という回答は非常に多いです。

このような経験から、私たちの採用サイトでも「私たちの失敗談」というコンテンツを掲載し、自分たちは必ずしも完璧ではない、弱点のある人でも応募してもいい、ということを伝えるようにしています。

顧客との守秘義務に反するような生々しい話までは書けませんが、可能な範囲で「私たちはけっして完璧ではない」ということが伝えられるように、できる限り自己開示するように努めています。これを印象的なコンテンツとして挙げてくれる求職者もしばしばいて、読むと記憶に残るコンテンツになっているようです。

みなさんの採用サイトでも、良い話、美しい話ばかりを乗せようとするのではなく、人間らしい失敗や弱点なども、赤裸々に自己開示するようなコンテンツを作ってみてはいかがでしょう。それによって、他社とは異なる際立った印象を持ってもらえるかもしれません。

例4:採用の秘訣

枌谷力氏

同じく私たちの採用サイトの例ですが、「採用の秘訣」というコンテンツを掲載しています。これは要するに私たちの選考基準です。

「選考基準を公開してしまっては求職者がそれを攻略するような行動に出てしまい、選考がうまくいかなくなるのでは」と思うかもしれません。しかしこのコンテンツを5年以上掲載していますが、選考基準を公開したことによる実害を感じたことは一度もありません。むしろ、選考基準を明確に公開しているにも関わらず、この基準に乗らずに応募してくる人は、会社の事をよく調べてない人といった判断材料にもできます。逆に、この選考基準を読み、それに合わせて行動できる人は、きちんと準備をして、きちんと対応できる人とも判断できます。

「選考基準を求職者に見せない方がいい」というのは実は誤った考え方で、それを明らかにすることの弊害は実はありません。一方で採用基準は、真面目に就職を考えている求職者なら絶対に見たくなる「求職者の得になる情報」です。

「こういうことは掲載すべきではない」という固定観念にとらわれず、「求職者だったら、きっとこんな情報は知りたいよね」という原点に立ち返り、採用サイトに掲載すべきコンテンツを柔軟に考えてみるようにしましょう。その柔軟な姿勢や思い切った行為そのものに、求職者は好意的印象を抱くかもしれません。

例5:他社内定と迷われている方

本記事のテーマの一つは、「採用サイトの固定観念を打ち破ろう」ということですが、最後にご紹介するコンテンツも、求職者の立場に立って固定観念を打破することから発想できるコンテンツと言えます。

多くの採用サイトは採用サイト内のゴール(コンバージョン)をエントリーに設定していると思いますが、その考えに引っ張られて、採用サイトはエントリー前しか見ないと思い込んでいないでしょうか。

実は、求職者が採用サイトに訪れるのはエントリー前だけではありません。エントリー後の会社説明会の後に、説明を踏まえたうえで確認に訪れることもあります。書類選考後、面接前の企業研究のために訪問することもあります。また、複数の会社から内定が出た後、他社も含めてどこにしようか迷っている時、最後の意思決定をするために採用サイトに訪問するケースもあります。

このように考えると、求職者が仕事を探し始めてから内定を承諾するまで、全ての工程で採用サイトに訪問する可能性があるわけです。当然コンテンツも、この求職者の「ジャーニー」を満たすように作られるのが理想です。

このジャーニーのなかで、「内定後の求職者に応えよう」という発想で作られたのが、クラスメソッドさんの「他社内定と迷われている方へ」というコンテンツです。

ここでお伝えしたいのは、内定者向けコンテンツを作ろうという話ではありません。エントリーというシチュエーションに限定してコンテンツを考えるのではなく、求職者の体験を俯瞰的に見たうえで、求職者のためになる、求職者の判断を助けるコンテンツを発想していきましょうということです。

このような視点に立てば、冒頭で紹介したような採用の定番コンテンツ以外にも様々なアイデアが湧き出てくるはずです。

最後に

ここで紹介したコンテンツのアイデアに共通する視点、それが「求職者ファースト」です。採用サイトのコンテンツを考える時、どうしても企業ファーストの視点に陥ってしまいがちです。しかしそれでは「あれは載せられない」「あれを載せるのはマズい」と、どんどん発想を狭めてしまい、他社と似たり寄ったりの定番コンテンツしか掲載できないということになりがちです。

求職者ファーストの視点になるためには、求職者ファーストの生の声、あるいはそれに近い声に直接ふれることが不可欠です。たとえば、会社に在籍している社員は、数年前は求職者だったはずです。彼ら・彼女らの就職活動や転職活動の時の気持ちや体験をヒアリングするだけでも、企業ファーストの視点から解き放たれる良いキッカケになります。

実はこのような「ターゲットの生の声を聴く」というのも、マーケティング領域では当たり前に行われていることです。採用サイト、採用戦略においても、このようなマーケティング領域でやっているようなノウハウは積極的に活用していくのがいいでしょう。

採用サイトを作る時にやるべき6つのこと」で紹介した準備や活動も併用しながら、求職者のためになる求職者ファーストの、自社のありのままを表現したコンテンツを掲載し、自社とマッチする求職者と出会うキッカケ作りをしていきましょう。

https://indeed-omrj.com/post-0129
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