コロナ禍にあって昨対比10倍!正社員&デリバリースタッフの採用を改善した出前館の情報発信戦略

2021/07/01
コロナ禍にあって昨対比10倍!正社員&デリバリースタッフの採用を改善した出前館の情報発信戦略

コロナ禍の外出自粛の影響で、飲食店が作った料理を一般家庭などに配達するデリバリー業界が急拡大を続けている。なかでも業界大手の出前館は、ユーザーと飲食店をつなぐ「食のプラットフォーム」のパイオニアとして、業界においても社会的にも重要な役割を果たしている。

採用においては会社の規模が急拡大し、デリバリースタッフの採用は多い時期には月数千人規模。正社員も含めてスピーディかつ確実な採用が急務となっている。そうしたなか、どのような課題に直面し、どのように解決してきたのだろうか。また、どのようなメッセージを発信し、オウンドメディアリクルーティングに活かしているのだろうか。

株式会社出前館 取締役 執行役員 シェアリングデリバリー本部本部長の清村遙子氏に、採用戦略について語ってもらった。

清村遙子氏
清村遙子氏。取締役 執行役員 シェアリングデリバリー本部本部長。2004年、通信ベンチャーに入社して、数多くの新規事業立ち上げに参加。2007年に日系総合コンサルティングファームに転職し、事業戦略や営業マーケティング関連のプロジェクトを手掛けた。2013年、リクルートに転職して住宅事業系部門で事業企画を担当。2018年から株式会社出前館で勤務。現在はシェアリングデリバリー本部本部長として、配達品質向上への取り組みをけん引する。

コロナ禍により社会環境が激変するなか、大量のスタッフを採用

清村遙子氏

――コロナ禍により、デリバリー業界は激変したと思います。社会環境が大きく変わるなかで、出前館の事業がどう変化していったのか教えてください。

清村 さかのぼりますと1999年の創業時、出前館はピザやお寿司など自社でデリバリー機能を持つ飲食店さんのご注文を、オンラインで受け付けるというシンプルなマッチングモデルでした。しかし、それだけですと飲食店さんはデリバリーを始めるためのコストや事故のリスクを抱えることになりますし、エンドユーザーさんも注文できるお店が限られてしまいます。双方を解決するために、出前館側で配達のリソースを用意し、Web上でマッチングしたのです。その結果、飲食店さんはお料理をデリバリースタッフ(配達員)に渡すだけで簡単にデリバリーを始められるモデル「シェアリングデリバリー」に転換しました。それが2017年のことです。この頃から出前館としてはデリバリースタッフを大量採用し、出前がもっと日常的にみなさんのお役に立てるものになるように努めてきました。

そして、2020年は新型コロナウイルスの影響で、飲食店さんとしてもデリバリーが欠かせないものになりました。ユーザーさんも外出自粛期間中にデリバリーサービスを頼んだ方が約7割という調査結果があり、本格的に日常的なものに市場が拡大していきました。

――市場の拡大に伴い、出前館の組織も急拡大。2020年4月に緊急事態宣言が発令されてから数カ月間は、デリバリースタッフを月1000人ペースで採用していたそうですね。その後もデリバリーのニーズが増えており、かなりの人数のデリバリースタッフを採用していると思います。そこでの採用課題について教えてください。

清村 おっしゃる通り毎月かなりの人数のデリバリースタッフを採用しています。課題の1つ目としては、採用スピードアップがあります。2020年の緊急事態宣言では飲食店さんが休業を余儀なくされた影響で、そこで働いていた方から1日何百というご応募をいただきましたが、対応が追いつかず逃してしまうことがありました。そこで、求める人材像と採用基準を明確にして、従来は店長しかできなかった面接をアルバイトリーダーに権限委譲し、採用スピードを上げることで解決しました。

2つ目の課題は新規応募者の不足。応募者が急増した状況がしばらくして落ち着いて、様々な競合他社が参入し人材の取り合いになったのです。この点に関しましては、それまではアルバイトは時給制の直接雇用にこだわっていたのですが、「空いた時間にちょっとだけ働きたい」というニーズがたくさんあることがわかり、2020年5月からギグワーカーの方々にも働いていただけるように「配達パートナー」(業務委託)の仕組みを整えました。

――「Uber Eats(ウーバーイーツ)」とよく比較されますね。

清村 そうですね。出前館の強みは、デリバリースタッフと出前館、飲食加盟店と出前館とそれぞれ契約しており、万が一の場合には出前館が責任を取り、双方にとって安心安全な枠組みを用意していることです。

3つ目の課題は早期の離職。弊社は各配達拠点に店長である社員がいて、その下にアルバイトが300〜400人在籍する店舗型の運営になっています。退職抑制のためにES(Employee Satisfaction=従業員満足度)調査をしていますが、アルバイトの場合は「安定的に働きたい」「人間関係がいいところで気持ちよく働きたい」という声のほか、中長期的なキャリアプランを求める方が多いことがわかり、アルバイトから正社員になれる正社員登用の仕組みをオウンドメディアを通して説明しました。 業務委託の場合はきちんとした報酬の機会があること、サポート体制がしっかりしていることをお求めのことが多く、その点は採用情報サイトでも切り分けて、それぞれメッセージを発信しています。

オウンドメディアで理念をしっかり伝え、大量採用でもブレをなくす

デリバリースタッフ採用ページ
デリバリースタッフの採用に関する情報発信は特別サイトを通して行っている

――大量採用していかなければならない状況で、オウンドメディアによる企業理念の発信は重要だと思われます。御社においても採用情報サイトで理念を積極的に情報発信しています。

清村 理念の発信は重要です。我々は、もっとご家族がふれ合う時間が増えてほしいと願い、デリバリーの日常化を掲げています。加えて、飲食店さんで作られたお料理を大切に運ぶ地域密着型のインフラサービスを目指しています。そこに共感する方に来ていただきたい。オウンドメディアにおいてはその理念をわかりやすく伝えるよう心がけています。「代表メッセージ」として代表取締役社長 CEO・藤井(英雄)のメッセージを掲げているのもそういった理由からです。

また、弊社は3つの行動指針を定めています。

1つ目がWIN-WIN-WINの関係。飲食店さん、お客様、デリバリースタッフの三方良しであることが、結果的に会社のためにもなる四方良しにこだわっています。

2つ目が主体性。我々はベンチャー気質ですので、当事者意識を持って事業を推進していくという思いを持っています。

3つ目が存在意義。これは様々な解釈ありますが、「あったらいいな」というサービスではなく「出前館がなかったら困る」といっていただけるようなサービスにすべくこだわれるかどうかを考えています。

弊社は、今期、第二四半期も取り扱い高が600%となっていますし、デリバリースタッフも昨対比10倍です。そのため、上記3つの行動指針に加えて、スピード感や変化を楽しめるかどうかも求める人材像として重視しています。

――代表メッセージと並んで、もう一つメッセージ発信の役割を担っているのが社員の方々。社員のインタビューはどういった基準で選ばれ、何を伝えたいとお考えでしょうか。

清村 選ぶ基準は「活躍している人」、あるいは「活躍してほしい人」です。アルバイトから社員登用された人を含め、入社後のキャリアモデルのイメージがわくような人を対象としています。

――「仕事について」では、「営業部門」「マーケティング部門」「シェアリングデリバリー部門」など職種ごとにページを作られて、業務の内容フローを詳しく解説をされています。

清村 大枠の理念やビジョンは共通していますが、それぞれの職種によって、求職者が会社に求めること、会社が求職者に求めることが少しずつ違うため、それぞれに応じた具体的な情報をお伝えするために分けています。

明確な採用基準をオウンドメディアで発信することで、採用率が改善

清村遙子氏

――採用基準を明確にして採用権限をアルバイトリーダーに委譲したことで、デリバリースタッフの採用率はどれだけ変わりましたか。

清村 モニタリングの結果、応募から面接、面接してから採用の両方が改善しました。店長しか面接できない場合、店長が忙しいとすぐにご対応できません。アルバイトは応募してから1日以内に返信がないと、他社に行ってしまいます。権限移譲したことで面接までの時間が短縮され、面接率が向上しました。

また、採用基準を明確にしたことで、その明確な求人情報を見て応募してくださるので期待値がそれほどずれないようになりました。面接でご説明したことに対して「そういうつもりじゃなかった」「そういう条件ならちょっと遠慮します」ということがなくなりました。

――大量採用の際、求める人材の条件を担保しながら、人数も確保することが難しくなります。そこはどのように解決していますか。

清村 確かに難しい課題です。まず、入口のハードルはいったん下げました。身だしなみがきちんとしている、敬語を話せる、人の目を見て話せるという最低限のことを確認します。

その後、2種類の研修動画をご覧いただいています。どういう理念のもとで配達パートナーになってほしいのか、様々なシチュエーションでどういう行動をとればいいのか、具体的な注意点などの動画です。

そして、研修の内容を正しくご理解いただけているかどうかオンライン上でテストを受けていただきます。こうした「デリバリー配達開始までの流れ」についても採用情報サイトで発信しています。

採用後、ご希望があればユーザーさんにお届けする時に後ろから教育リーダーがついて行き、アドバイスすることもしています。また、評価のフィードバックも行っています。ユーザーさんからお褒めの言葉をいただいたら、ギグワーカーも含めてフィードバックし表彰することもあります。その結果、クレーム率がぐっと下がりました。ネガティブなフィードバックの場合は、一定数繰り返すとアカウント停止の措置を取っています。

――かなり細かく丁寧に教育に力を入れているんですね。

清村 配達先のユーザーさんだけでなく、道中も様々な方に見られています。地域で愛されるプラットフォームになるよう、トラブルがあれば一つひとつ丁寧に教育、改善していくことが大切だと思っています。

採用基準を明確にしたことで、社員のモチベーションも向上

出前館の採用ページ
社員のインタビューコンテンツを通して、求める人物像や企業カルチャーを伝えている

――オウンドメディアリクルーティングによって、キャリア採用にはどのような成果がありましたか。

清村 採用効率が上がりました。採用で求められる条件は、社員の評価においても同様に求められます。その基準が明確になったことで、社員もどうすればキャリアアップしていけるかという目安がはっきりしました。

デリバリースタッフを育成するには、その上のシニアクルー、さらにその上の店長やスーパーバイザーなど、上のレイヤーをしっかり育てなければなりません。そのためにも確固たる人材像をオウンドメディアで伝えていくことは高い効果があったと思っています。

――それぞれの採用チャネルはどういった状況でしょうか。定着率に差はありますか。

清村 職種によって違いますが、全体的に定着率がいいのは採用サイトと求人媒体です。社員はエージェントさんを通じての採用も多いですね。あとはボリュームとしては大きくはありませんが、リファラルが増えてきています。採用サイトとリファラルを通したオウンドメディアリクルーティングでは、やはり事前に情報をしっかり得ているので、「入社前の想像と違った」といったギャップが少なく、継続率が高い傾向にあります。

――今後、大量採用されていくなかで、採用効率も最大化する必要があると思います。投資対効果について各チャネルや広告、各メニューで見ていますか。

清村 はい、求人の媒体ごとに見ています。応募してから採用するまでと、採用してからどれくらい稼働するのか、CPA(Cost Per Acquisition)を見ています。メディアによっては、採用CPAがよくても稼働CPAが悪い場合もありますので、そこまで見たうえで判断しています。

応募単価も見ていましたが、意向の浅い方がとりあえず応募だけすることもありますので、しっかり応募単価と採用単価、稼働単価まで見ていくことは大事ですね。

https://indeed-omrj.com/post-0147
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