転職サービス機能など、求職者とつながる3つの接点を採用サイトに導入。応募数を前期比3倍に増やしたラクス

2022/01/28
転職サービス機能など、求職者とつながる3つの接点を採用サイトに導入。応募数を前期比3倍に増やしたラクス

経費精算システムの「楽楽精算」や電子請求書発行システムの「楽楽明細」などのクラウドサービスによって、バックオフィス業務・フロントオフィス業務を支援する株式会社ラクス。サービス拡大と企業成長に伴う採用力強化のためにリニューアルしたキャリア採用サイトが評価され、「Owned Media Recruiting AWARD 2021」(以下、アワード)で入賞を果たした。

採用サイトには、自社イベントの案内やカジュアル面談の提案、チャットボットによるコミュニケーションなど、求職者とのミスマッチを防ぎ共感を喚起するコンテンツが盛り込まれている。サイト訪問数は前期比207%、サイトを経由した応募数は前期比303%、同じく1次面談数は前期比153%を実現するなど、その成果はめざましい。

リニューアルを手掛けた株式会社ラクス 経営管理本部 総務人事部 採用課の坂井勇太氏と林大夢氏に、アワードの審査員を務めた公益財団法人 連合総合生活開発研究所 主幹研究員の中村天江氏が、同社のオウンドメディアリクルーティングと今後の展望について聞いた。

株式会社ラクス 経営管理本部 総務人事部 採用課 坂井勇太氏(左)林大夢氏(右)
坂井勇太氏(左)。株式会社ラクス 経営管理本部 総務人事部 採用課。2006年より求人広告や採用サイトの営業・制作ディレクション、転職メディアの企画・運営・デジタルマーケティングを経験。2019年よりラクスに参画。採用マーケティングチームを立ち上げ、オウンドメディアリクルーティングを推進。

林大夢氏(右)。株式会社ラクス 経営管理本部 総務人事部 採用課。2017年に新卒で人材紹介会社に入社し、法人営業を経験。独立を経て、2020年よりラクスに参画。採用マーケティングチームメンバーとしてオウンドメディアリクルーティングを推進。

「プラットフォーム化」を目指してキャリア採用サイトをリニューアル

株式会社ラクス 経営管理本部 総務人事部 採用課 坂井勇太氏

中村 この度の「Owned Media Recruiting AWARD 2021」入賞、おめでとうございます。

坂井 ありがとうございます。実は、第1回の「Owned Media Recruiting AWARD 2019」の時から、キャリア採用サイトのリニューアルが済んだらエントリーしたいと考えていました。入賞はとても嬉しかったです。

中村 そのリニューアルは、どのようなスケジュールで実施されたのでしょうか。

坂井 2019年からスタートして2020年3月末にリリースしました。ただし、その時点では最低限のコンテンツだけがある状態で、全体の内容が整ったのが2021年の春くらいです。ほぼ全てのコンテンツを一新しました。

中村 アワードの審査では、オウンドメディアという言葉から想起するUI/UXと、ラクスさんの採用サイトにおけるUI/UXが、かなり違うことが注目されました。求職者を惹きつけるコミュニケーションを設計されたと思うのですが、リニューアルのねらいやプロセスについてお聞かせください。

坂井 求職者とラクスの双方にとって最適なサービスを目指し、戦略的な採用を後押しするために「プラットフォーム」化をコンセプトとしました。一般的なオウンドメディアであれば、自社の伝えたいことを盛り込んで完成となることが多いと思いますが、私たちの採用サイトは、プラットフォーム的な位置付けにして育てていく、メディアというよりサービスに近い捉え方をしています。

サービスだから改善していきますし、当初設計したUI/UXもPDCAを回して何度も修正しながら現状に至っています。そこが結果的に差となったのかもしれません。

中村 その視点は、「ITサービスで企業の成長を継続的に支援します」というラクスさんのミッションに通じるものがあるのでしょうか。

坂井 はい。弊社が提供するクラウドサービスは、企業の業務効率化や付加価値化に貢献するため、ローンチして終わりではありません。アップデートし続ける必要があります。採用に関しても、その思考を踏襲しています。

 リニューアルにおいては、まず、ラクスの文化や社員を紹介する「ストーリー」や、各部門責任者のインタビュー「リーダーが語る」といった記事コンテンツを。次に、「イベント」や「カジュアル面談」、求職者からのお問い合わせ対応を自動化する「チャットボット」といったリアルなタッチポイントを整備する流れでアップデートしていきました。

坂井 モデルケースとして参考にしたのは転職サービスです。一般的に多くの求職者は、転職サービスを通じた転職活動を行っています。その際に求められる「サービス」は何かというと、転職系イベントや企業の説明会、人材紹介会社での面談などです。それらの要素を取り入れたのです。

中村 なるほど。転職サイトや人材紹介会社が行っていることを自社の採用サイトに組み込むという発想があったわけですね。

坂井 そのとおりです。とはいえ、採用サイトのプラットフォーム化に関しては、まだ実現できていない構想もあります。結果が出たらプラスαで投資する姿勢で、小さく始めて大きく育てていきたいです。

「自社が目指す姿」を伝えるパーパスコンテンツについてはこちらへ

“誇張しないリアルさ”に振り切ったコンテンツでミスマッチを防ぐ

株式会社ラクス 経営管理本部 総務人事部 採用課 林大夢氏

中村 オウンドメディアは一般に、AIDMA(注意喚起、関心、欲求、記憶、行動)を促す目的で作られるため、「情報量が多い、伝えたいこと(良いこと)ばかり、圧が強い」となってしまうことがままあります。一方、ラクスさんのキャリア採用サイトはホスピタリティが高く、しかもそれが押し付けがましくなく心地いいのです。

 ありがとうございます。特に、社員インタビューではその点を意識しました。仕事のやり甲斐やラクスの魅力など、ついたくさんの情報を盛り込みたくなりますが、そこは抑えて「社員が“事実”として何を感じ、何に向き合っているのか」を深めています。求職者がご自身と重ねて「ラクスが自分と合うか否か」を判断していただけるディテールを重視しました。

中村 そのトンマナが絶妙でした。何かこだわりはあったのでしょうか。

 社員へのインタビューの際、「お客様の課題をどう解決していくか」という話題になると、声がワントーン上がり言葉数も多くなっていく。皆の顔が生き生きしてくることに気付いたんです。そこを誇張せず、ありのままに伝えています。

坂井 以前のキャリア採用サイトは、「私たちは楽しく働いていますよ」といった雰囲気“だけ”を押し出していたためか、面談では「楽しそうだったから」「早く帰れるんですよね」といった声もあって、本当に関心をもっていただきたいポイントがズレているという危機感があったんです。

そのため、良いところも悪いところも判断材料として提供することを大事にし、既存のコンテンツは引き継がずに大きくリニューアルして「誇張しないリアルさ」へ振り切ることにしました。

また、指標としていた応募率なども改善されてきており、無闇に情報量を増やすのではなく質にこだわっていくつもりです。

「3つのリアルなタッチポイント」で採用の課題を解決

公益財団法人 連合総合生活開発研究所 主幹研究員 中村天江氏

中村 さきほどおっしゃったリアルなタッチポイントについてお聞かせください。

坂井 タッチポイントとして、「座談会や会社説明会などのイベント」「チャットボット」「カジュアル面談」を作りました。

1つ目は、今もそうですが、たとえばエンジニアの座談会などは、採用課ではなく当該分野のエンジニアが所属する部門が企画・運営を行っています。参加者にとって有益な体験になっていますが、以前の採用サイトでは紐付けがなされていませんでした。「こんなにいいアセットがあるのにもったいない」ということで、導線を設置しました。

一方、採用部門が主体となって実施している会社説明会には、応募を検討している方へラクスの企業文化をお伝えし、キャリアパスの不安や疑問などを解消していただくことで応募の後押しをしたい、というねらいがあります。

ラクスのキャリア採用サイト
採用以外に関するイベントも頻繁に開催されており、採用サイトで紹介することで潜在的求職者への興味喚起につながっているという

坂井 2つ目のチャットボットは、2021年の1月に導入しました。その背景には、問い合わせフォームだと、土日などの休業日はレスポンスができないし、せっかく興味をもっていただいたのにお待たせしてしまう。また、求職者からの問い合わせ内容の多くはいくつかのテーマに絞られるため、あらかじめ回答をテンプレ化できるだろうという考えもありました。

さらに、チャットボットは当社が運営しているサービス「チャットディーラー」を利用することができます。社内のサポートを受けられる環境を活かしてチャレンジしました。

ラクスのキャリア採用サイト
採用サイトは求職者へ寄り添ったユーザーインターフェースになっており、チャットボットで疑問を解決し、そのままカジュアル面談の申し込みへ進める

 チャットボットでの自動対応が可能になったことで、現在は迅速に求職者の疑問に対応できています。さらに、求職者のチャットボットの利用状況から、採用活動や採用サイトに活かすことができる課題を定量的に把握・判断できるようにもなりました。

坂井 たとえば、職場の雰囲気や選考準備などは、採用サイトで説明しているのに、チャットボットで質問をいただいていました。その理由は、伝え方が足りていなかったからかもしれませんし、採用サイトに載せれば読んでもらえるという前提自体が企業側のエゴで、実は読まれていなかったからかもしれません。そういった仮説の材料になるため、PDCAサイクルも回しやすくなったと思います。

中村 素晴らしい効果ですね。3つ目の、カジュアル面談についてもお聞かせください。

 「採用サイトはたくさんの人に訪問いただいているにも関わらず、応募いただける方は少ない」という課題がありました。どうしたらもっとラクスに興味をもっていただけるか、どうしたらより理解や共感を得ることができるかを考えたことが、カジュアル面談を始めたきっかけです。

そこで見えてきた候補者様のニーズや個々人が抱えている課題感に沿って、カジュアル面談で提供できる情報を磨くことで、応募数はもちろん書類通過率も大きく改善しました。現在、カジュアル面談後に選考に応募いただく候補者の書類通過率は、全チャネル平均の倍以上になっています。

求職者にとって「最高の体験」をトータルデザインしたい

中村天江氏(左)坂井勇太氏(中)林大夢氏(右)

中村 実はアワードの審査員評で、「キャリア採用サイトで、会社がどんな事業を行っているのかわかりにくい」と、「採用サイトは、採用に関することに特化しており、事業内容の訴求に関しては意図的に簡潔にしているのでは」という見方にわかれました。その点についてお聞かせいただけますか。

坂井 意図的に簡潔にしました。キャリア採用における求職者は、必ずコーポレートサイトも確認していることがわかっています。たとえば、財務の健全性など、一般的にコーポレートサイトにしか掲載しない情報をチェックしているのです。

そのため、「求職者は両方のサイトを見る」ことを前提として、コーポレートサイトにあるような事業軸の情報は最小限に抑え、役割を分担させました。両サイトに類似コンテンツがあることで想定される、求職者の「さっき読んだ話ばかりだな」といったネガティブなUXも回避することもできます。

その一方で、求職者は「ラクス」を知らない方が多く、「採用サイトに掲載する事業内容を最小限にした」判断が正しかったのか否かは、現時点でははっきりとわかりません。今回、審査員評でいただいたご意見を踏まえ、あらためて検討すべき課題だと考えています。

 どうしたら事業理解を深めていただけるアプローチを強化できるのか。それはキャリア採用サイトの内で行うべきか、外で行うべきか、説明会など異なるタッチポイントで行うべきなのか。統合的にメディアプランニングをしていく必要があるでしょう。

中村 確かに、求職活動において今見ている一つの採用サイトがUXの全てではありません。複合的な「仕掛け」を考慮して様々な打ち手を持ち、求職者のエンゲージメント強化につなげていく必要があります。お話を伺っていると、そこを大切にしていらっしゃると感じました。では、最後になりますが、オウンドメディアリクルーティングについての展望をお聞かせください。

 基本的には、現在の方向性での改善を続けていきます。採用サイトのみで捉えるのではなく、複数のメディアや複数のタッチポイントを含めて、どのような体験が求職者にとってベストなのか。そこをデザインしていくつもりです。

求職者と、どこで最初に出会うのか、どのような出会い方をするのか。求職者のキャリアによってもあり方は変わってくると思います。求職者一人ひとりのニーズに沿ってパーソナライズしていくような訴求のあり方を模索していきたいですね。

坂井 オウンドメディアは非常に重要なものですが、求職者にとっては一つの通過点でしかありません。だからこそ丁寧に寄り添わないと、ミスマッチが生じてしまうかもしれない。一方、私たちにとっても、採用サイトを作ることがゴールではありません。面談など全てのタッチポイントも含めて、弊社に興味を持ってくださった方に最大限の価値の提供をする。そこを突き詰めていきたいと考えています。

中村 パーソナライズの方向性を模索し、求職者へ寄り添った価値を提供していかれるのですね。やはり、ラクスさんは、従来のオウンドメディアの枠に囚われず、サービスに近い考え方をされているようです。これからの展開も楽しみにしております。本日は、ありがとうございました。

https://indeed-omrj.com/post-0166
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