自動車業界の変革期、モビリティの新領域へ挑むHonda「らしさ」を伝え、内外にファンを生み出すオウンドメディア運営術

2022/02/14
自動車業界の変革期、モビリティの新領域へ挑むHonda「らしさ」を伝え、内外にファンを生み出すオウンドメディア運営術

現在を「第二の創業期」として、「何に取り組む企業か」「どんなメンバーが働いているのか」を、より多くの人にあらためて知ってもらうための情報発信を行っている本田技研工業(以下、Honda)。その一環として、Hondaの「人=原動力」というメッセージ(フィロソフィー)を伝える採用メディアである「Me and Honda, Career」を2020年8月に立ち上げ様々な事業領域、職種で働く社員の仕事に対する想いややりがいなどを発信している。

そうした発信のなかで、「Hondaらしさ」が伝わる魅力的なコンテンツ作りや、膨大な職種数ながら丁寧かつ詳細にまとめられたジョブディスクリプションが評価され、同社は「Owned Media Recruiting AWARD 2021」に入賞した。

人事部 採用グループ グループリーダー 三厨敬祐氏と、同採用グループの相澤くる美氏に、アワードで審査員を務めたIndeed Japan株式会社 代表取締役/ゼネラルマネジャー 大八木紘之が、オウンドメディアリクルーティングの情報設計について聞いた。

三厨氏 相澤氏 プロフィール
三厨敬祐氏(右)。人事部 採用グループリーダー。2004年に新卒入社。四輪の製作所や研究開発拠点・本社および北米駐在において人事・労務・人材育成・採用を幅広く経験。21年4月より現職となり、全社新卒・キャリア・障がい者採用のグループリーダーを担当。相澤くる美氏(左)。人事部 採用グループ。2016年に新卒入社。二輪やパワープロダクツの量産拠点である熊本製作所の総務課に配属。社内資格制度、育児介護窓口などを担当。2019年11月人事部人材開発課に異動。事務系新卒採用の担当を経て、現在は採用ブランディングや中途採用を担当。

社内と社外、より多くの人があらためてHondaを知るための情報発信

三厨氏 相澤氏 インタビューカット

大八木 この度は、「Owned Media Recruiting AWARD 2021」(以下、アワード)での入賞おめでとうございます。受賞後の社内外の反響はいかがでしたか。

相澤 ありがとうございます。まず社内の反響が大きかったです。「更新を楽しみにしているよ」や、取材対象となった社員からは「家族に自分の仕事を知ってもらうことができて嬉しい」という声をもらいました。コンテンツへのフィードバックを伝えてくれる方が増えたことが、肌感覚としてあります。

三厨 自社ながら、自分と関係のある業務以外については知らないことも多いと思いますので、「Hondaってこんなこともやっているんだ」とあらためて知ってもらえたということは大いにあると思います。

相澤 社外の反響としても、採用メディアである「Me and Honda, Career」の記事制作を協力していただいている制作会社さんへ、他の企業さんから「Hondaさんってどのようにコンテンツを作っているんですか」と質問が来ているようです。各所で注目度が高まっているようで、ありがたいことですね。

大八木 情報発信においてとても緻密に設計をされているように思いました。「Me and Honda, Career」の立ち上げの経緯やKPIはどのようになっているのでしょうか。

相澤 自動車業界が変革期にあり、以前は採用を行っていなかった職種への採用ニーズが高まっています。そのなかで、これまでHondaに興味がなかった人に対しても、こちらから主体的にメッセージを届ける必要性を感じたことが大きなきっかけです。

Me and Honda, Career トップ
各メンバーが自分なりの「Hondaらしさ」を体現しつつ、自身のやりたいことも推進していることが感じられる「Me and Honda, Career」

三厨 どの程度興味を持って見ていただけているかについては、月3万PV、1記事当たりの滞在時間3分以上など、様々なKPIを設定し確認しています。ただ、相澤が申し上げたように、現時点ではHondaに関心がない人にも見ていただくというコンセプトなので、5年後、10年後のニーズを生み出していきたいと考えています。今はまだ、Hondaといえば自動車やバイクというイメージが強いので、「Hondaってこんなこともやっているんだ」と感じてもらうことが狙いの一つです。

相澤 私も「こんな素敵な人がいるんだ」「Hondaで働くってワクワクするな」など、幅広い読後感を持っていただきたいと思っています。記事の最後に採用情報へのリンクボタンを置いていますが、そこはあえて強調せず、あくまでもコンテンツとして楽しんでほしいですね。

旬の話題を織り交ぜながら、より読み手に届く情報発信を設計する

三厨氏 インタビューカット

大八木 記事の更新は具体的にどのように計画していますか。

三厨 1年間のうち3分の2は、どのタイミングでどの部門を取り上げるか計画を立てています。残りは、時々の旬のネタ、たとえば2021年ならDXや自動運転、コロナ禍での奮闘の様子などをタイムリーに掲載しました。現状の更新頻度は週に1本、毎週月曜日に公開しています。

大八木 コンテンツ制作の体制はどのようになっているのでしょうか。

相澤 社員として取材の調整や企画を行う担当者は、現状私1人です(笑)。ライティングやページ作成は制作会社さんにご協力いただいています。

大八木 お一人でやられていたのですね (笑) 。最近特に手応えを感じたコンテンツやテーマはありますか。

相澤 色々ありますが、空飛ぶクルマと呼ばれる「Honda eVTOL」(電動垂直離着陸機)や宇宙領域への挑戦を企業として2021年9月30日に発表しました。そのタイミングで、事業を担当する社員のインタビュー記事を公開できたことに特に手応えを感じました。

大八木 「Hondaにしかできないビッグチャレンジ!空の次世代モビリティ開発に詰まった夢」(2021年10月11日掲載)のことですね。同じ時期に公開されるように制作を進められたのでしょうか。

Me and Honda, Career  記事ページ
社員インタビューは「人」にフォーカスした作りとなっており、各社員の仕事への想いが語られている

相澤 研究所の採用担当者とは人選に関するやり取りをしており、この件のプレスリリースを9月の末に行うことを教えてもらいました。

すぐに人選や取材の調整を行い、多くの方の協力を得ながら9月30日のプレスリリースの直後である10月11日には「Me and Honda, Career」で記事の公開にこぎつけることができました。会社としてのリリースに合わせてタイムリーに発信することができたいい例ですね。

もちろん、プレスリリースや製品発表との連動も大切ですが、あくまで人の魅力を伝えるメディアとして人にフォーカスをあてることを意識しています。

大八木 この記事に対する社内外の反響はいかがでしたか。

相澤 記事の公開時点で、新しいモビリティ関連の中途採用の募集はすでに1年以上オープンしていたのですが、それまでは求めている人材像に合致した方からの応募はあまり多くないという状況でした。

しかし、公開後は「まさにこういう人に来てほしかった」という方からの応募が増えたという声を聞きました。実際に入社した社員からも「記事を読んで自分の想いを形にできると確信を持ちました」と言ってもらえています。

中途や新卒に限らず、選考のなかで「希望職種の記事を読み返して、自分が働く姿を具体的にイメージしています」という声もいただいており、求職者の方のHondaへの理解や想いの深さが増している実感があります。

発信のテーマと目的を事前に固め、現場の熱量を最大限生かす記事作り

相澤氏 インタビューカット

大八木 「Hondaにしかできないビッグチャレンジ!空の次世代モビリティ開発に詰まった夢」に登場した3名は、どのような形で選ばれたのですか。

相澤 人選は研究所にいる採用担当者の協力を得ました。eVTOLおよび宇宙ロケットのプロジェクトを推進している川辺俊さんは、ジェット機の研究開発の界隈ですでに有名な社員なので、社外に対してのインパクトがあると考えお話を伺いました。

その一方で、ふだんあまり表に出ることのない若手社員にも協力してもらった形です。人選は人事部側だけで決定するのではなく、部門の声を尊重しています。

三厨 やはり現場のことは現場が一番詳しいので、「読み手にこういう体験や気付きを届けたい」といったコンテンツ発信の意図や目的だけ伝えて、それを叶えられる人を探してもらっています。ですので、肩書きに関わらず熱量を持って仕事に取り組んでいる人が人選されることが多く「Hondaらしさ」を感じています。

大八木 現場との目的のすり合わせはすんなり伝わることが多いのでしょうか。コミュニケーションはどのように取っていますか。

相澤 そもそも中途採用を実施している部門は、積極的に協力してくれます。そうでない部門に依頼する際は、目的や意図と併せて「採用面だけでなく取材された本人のレコグニションにつながる」「メッセージを社内外に届けられる」などのメリットを伝えています。そこに納得いただいて、前向きな気持ちになってもらえれば、基本的にHondaは「やりたいこと」を突き詰める社員が多いので、「こうしたほうが面白くなるのでは」「こんな企画はどう」といった風にコミュニケーションが自然と活性化していきます。

三厨 一つの例としては、コロナ禍で出張が制限され、カメラマンが取材現場に行けず、最終的に依頼先の部門のマネージャーが撮影したというケースがありました。いざ出来上がってきた写真を見ると、我々が「まさにこういう写真を載せたかったんだ」というカットで、「現場の熱量」が伝わってくる仕上がりだったのです。それまで「Me and Honda, Career」で発信してきたことが、社内にもしっかり伝わっているんだなと感じました。

企業の「らしさ」を引き出すポイントは、人生のターニングポイントの深掘り

大八木 インタビューカット

大八木 事業が多岐にわたっていながら、いかに「Hondaらしさ」を集約させるかはとても難しいと思います。タイトルの「Me and Honda, Career」をはじめ、言葉選びなどのクリエイティブ面で気を付けていることはありますか。

相澤 「Me and Honda, Career」は、「Hondaという会社として」よりも「Hondaで働く1人の私の想い」をしっかり届けたいという観点で決まりました。

それぞれのコンテンツは、意図的に「Hondaらしさ」を出そうとしているわけではありません。ただ、社員個人に寄り添うことを意識してインタビューに臨むと、その人が共感しているHondaらしい考え方やフィロソフィーが自然と感じられる内容になっている感覚があります。

大八木 多くの企業で「インタビューの人選が難しい」と聞きます。取材した社員から、そういった「自社らしさ」を表す言葉がなかなか出ないケースが多いようです。

三厨 創業者の本田宗一郎の「どうすれば人の役に立てるか」という想いは、1948年の創業以来、社員の思考や行動に根付いています。だから、いつ、誰の言葉を、どう切り取っても「Hondaらしさ」が表れるのではないかと思っています。

「Me and Honda, Career」立ち上げの際、「社員全員が主役なので全員を登場させたい」と考えたほど、誰が出てもしっかり語れる。むしろしゃべりすぎて記事に収まるのかという心配のほうが大きいくらいです(笑)。

相澤 「らしさ」を引き出すテクニック的なところで言うと、基本的には社員が現在取り組んでいる仕事にフォーカスしていますが、同時に、価値観が大きく変わった時のことについても深掘りしています。人生のターニングポイントでは、HondaのフィロソフィーやHondaで働くなかで感じたことが拠り所になっていることも多いので、「Hondaらしさ」が浮き彫りになると思います。

社内にもファンが増えていくオウンドメディアを育てる

三厨氏 相澤氏 大八木 インタビューカット

大八木 ジョブディスクリプションにも、企業のカルチャーや姿勢が表れると思います。御社のジョブディスクリプションは、丁寧かつ詳細で、ボリュームも多いです。仕事の内容や求める人材像を言語化するのは難しい作業ですが、どんなことを意識されていますか。

相澤 求職者の方が抱くイメージに、入社前後で極力齟齬が生じないようにすることを強く意識しています。

三厨 求める人材像を言葉にしていくと、文字がどうしても多くなります。ただ、ジョブディスクリプションまでたどり着く人は本格的に興味を持っていただいている方なので、情報量が多すぎて困ることはないという想いで書けるだけ書くようにしています。

大八木 採用において、自動車業界以外で競合となっているのはどのような業界でしょうか。

相澤 これまでメーカーとして「形あるものをつくること(モノづくり)」に取り組んできましたが、これからは「サービスや仕組みの提供(コトづくり)」にシフトしていきます。新たなビジネスを生み出していく力を持つ人が集まる企業が競合になると考えています。

大八木 今後の採用施策について現段階でのお考えがあれば教えてください。

三厨 Hondaは今、第二の創業期にあると位置づけており、必要な人材像も変わってきます。オウンドメディアを通して、これまでHondaとの接点を持っていなかった人など、今まで出会ったことのない多くの人たちに興味を持っていただきたいと考えています。正解もゴールもないからこそツールややり方も既存の考え方にとらわれずこれからも取り組んでいきたいですね。

相澤 2020年8月の公開から1年以上経って、「うちの部門を取材してほしい」「この企画はどうか」と社内で持ちかけられるようになりました。そうした部門からの推薦・売り込みをもっと増やしていくことが理想です。

三厨 オウンドメディアでの発信は我々だけではできません。社員みんなの協力が必要なので、社外だけでなく社内にもファンを作ることを意識しています。直接の担当は相澤1人ですが、考えようによっては何万人ものサポーターを付けることができるということです。オウンドメディアを魅力ある効果的なものにし続けるためには、社員にファンになってもらい、みんなで育てていくことが重要だと考えています。

https://indeed-omrj.com/post-0172
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