カギは「目的の明確化」と「読まれる質」――リブランディングから始まったgumiのオウンドメディア採用術

2022/02/18
カギは「目的の明確化」と「読まれる質」――リブランディングから始まったgumiのオウンドメディア採用術

2007年の創業以来、モバイル端末向けSNSやフィーチャーフォン向けアプリの開発、現在では主力のモバイルオンラインゲーム事業に加え、新規事業としてXR領域(VR、AR、MRなど)やブロックチェーン領域にも参入し、事業領域を拡大しているgumi。

この度、同社は企業カルチャーが全面に出たオウンドメディア起点でのオープンな採用情報発信が評価され、「Owned Media Recruiting AWARD 2021」(以下、アワード)に入賞した。

アワードで審査員を務めたルーセントドアーズ代表取締役の黒田真行氏と、gumiのBusiness Promotion Directorである寺村康氏が、オウンドメディアによる発信や企業間での情報交換の重要性について語り合った。

寺村氏 プロフィール
寺村康氏。Business Promotion Director。慶應義塾大学経済学部卒業後、2005年4月に日本政策投資銀行へ入行。国内外の大手法人向け融資業務や債権管理(事業再生)業務のほか、人事部門にて主に採用業務などに従事。2018年4月にgumiへ入社し、企業広報や渉外業務を管掌しているほか、現在は新規事業(ブロックチェーン事業、XR事業など)の推進も担当。

会社としてのリブランディングからスタートしたgumiの採用広報

寺村氏 黒田氏 インタビューカット

黒田 この度は、アワードでの入賞おめでとうございます。

寺村 ありがとうございます。

黒田 アワードへのエントリーは、これまで人事部門からが多く、御社のような広報セクションからの応募は珍しかったので、HR(Human Resources)との役割分担などが気になっていました。寺村さんが採用に関わるようになったのは、どのような経緯だったのでしょうか。

寺村 私が入社したのは2018年で、その際に与えられたミッションが、「gumiに足りないことをやってくれ」というものでした。当時、gumiは世間的にネガティブ寄りのイメージを持たれていたので、真っ先に取りかかったのが企業のリブランディングです。

そのための取り組みを進めるうち、会社として広報施策が弱いことがわかってきて、そこを担当することになり、自然と採用広報も手がけるようになったという流れです。

黒田 寺村さん個人のミッションの拡大に伴い、Business Promotionというセクションの領域も広がっていったわけですね。

寺村 そうですね。結果的に、Business Promotionのなかに採用広報業務が入る形になりました。

もともと当社は9割以上が中途採用で、業界の特性として人材の流動性が高く、2〜3年で社員が入れ替わっていました。そのため、毎日のように幅広い職種で採用の選考が行われていて、業務過多なHRだけでは採用広報に十分な工数を割けないところがあったのも実情としてはあります。そこで、Business Promotionが企業広報の延長線上で、採用広報も担当するようになりました。

社内外の双方へ届けることを、採用広報の設計段階から組み込む

採用メディア「ばんぐみ」 記事ページ
「ばんぐみ」では、gumiのカルチャーや雰囲気をオープンに伝える「踏み込んだ」内容のコンテンツが並ぶ

黒田 入賞について、社内の反応はいかがでしたか。

寺村 何かしらの賞をいただくことが長いことなかったので、経営陣も現場も喜んでいます。オウンドメディアリクルーティングの効果を実感してきているところなので、今回の受賞でより拍車がかかることを期待しています。

黒田 gumiの採用サイト採用メディア「ばんぐみ」などを拝見して、オウンドメディアリクルーティングの新境地を開いた、時代を一歩進めたという印象を持ちました。

現在の採用における情報発信の取り組みは、やはり採用広報の強化という課題からスタートしているのでしょうか。もしくは、そもそもアワードをねらってのものだったとか(笑)。アワードのエントリーシートに記載された取り組み内容が、かなり評価基準に即したものになっていたので気になりました。

寺村 担当スタッフは最初からアワードをねらっていたようですね(笑)。

「採用サイト、採用メディアなど諸々を含めた『オウンドメディア』を活用した発信に注力する」。そう言うのは簡単ですが、社内外から関心を集める必要があります。その際、アワード受賞というお墨付きがもらえれば注目度は全然違ってきます。

黒田 なるほど。言ってしまえばアワード受賞も発信の一部ということですね。また「社内外から関心を」というのは、もともと社内に向けた発信も意識されていたのでしょうか。

寺村 そうですね。採用広報における一番の課題は、求職者に限らず、あらゆるステークホルダーに対して情報提供が少ないことでした。

その影響の一つとして、社員のエンゲージメントの問題がありました。以前は、社員であっても会社の動きやカルチャー、他部署の情報などが十分に共有されていませんでした。そのため、gumiという組織として同じ方向で働いているという意識を持ちにくい状態だったのです。

そこで、オウンドメディアで情報発信をする、そして発信の方向を内部にも向けることで、会社や事業に対する社員の理解を促進しようと考えました。結果として、個々の社員が自社の魅力に気付き始め、現在ではリファラル採用の割合も増加しており、良い流れを作れたと思っています。

オウンドメディアリクルーティングの観点から見る、効果的な採用ページや採用コンテンツの考え方についてはこちらもご覧ください

正直にフラットに、「読者の時間」を徹底的に意識したコンテンツ作り

寺村氏 インタビューカット

黒田 社内外の両方を意識したコンテンツとなると、求められる情報の質がかなり上がりそうですね。自社が伝えたいことを優先して発信する企業は多いのですが、御社はより求職者が知りたいことにフォーカスしたコンテンツを発信されていると感じます。その点が新しく、一歩抜け出した取り組みという評価につながったわけですが、その点についてはいかがですか。

寺村 良いことも悪いことも赤裸々に発信をすることは意識しました。入社後のギャップも減ると思います。ミスマッチは、求職者と採用する側の双方にとって無駄以外の何者でもありませんからね。

社内報的な役割を兼ねていることもあり、嘘になっていないかという観点では厳しいチェックを自然と行うようになりますね。

黒田 社内を熟知した既存社員向けのインナーブランディングにも活用するとなると、「体裁良く取り繕った外向けの情報発信」をするわけにはいかないので、クオリティが確実に上がりますね。そもそも外部からの目線も、今は口コミサイトの登場できれいごとが通用しなくなり、厳しくなっている側面もあるので、読者のニーズに応える情報の深さや一貫性がより重要になってきていると感じます。

寺村 会社や事業に対する深い情報にふれることは、社員にとっても重要です。gumiでは採用の面接に現場の社員も参加するので、会社や事業について知らないと求職者と満足なコミュニケーションができません。

黒田 現場にも刺激を与え、会社全体としてプラスに働くわけですね。それにしても、コンテンツを見ると、過激とも言える表現があります(笑)。社内の理解を得るのに苦労されたのではありませんか。

寺村 「凸撃!ノセちゃいますが、ナニか?」のシリーズは特にそうですね(笑)。どこまで踏み込んだものにするか迷いましたが、経営陣は前向きで、「もっとやってもいいんじゃないか」という声もあったぐらいです。ありがたく感じつつ、遠慮なく攻めさせてもらっています(笑)

経営陣の後押しもそうですし、各コンテンツは、私たちのセクションだけではできなかったと思います。なにしろ社内にはコンテンツ作りのエキスパートがたくさんいますから。ゲームプロデューサーやプランナーなどのアドバイスも真摯に受けています。

黒田 強力な援軍ですよね。

寺村 はい。そのアドバイスのなかで、特に大切にしているのは「読者の時間をいたずらに奪うな」ということです。コンテンツを読んだ人に、時間を費やして良かったと思える面白さや共感、感動を提供することを徹底的に考え抜けと言われました。

アイデア創出における「企業間の情報交換」の可能性

ジョブディスクリプション 必須条件の確認欄
gumiのジョブディスクリプションでは、業務概要や待遇の記載に加え、必須スキルやマインドの最終確認がある

黒田 ジョブディスクリプションも、求職者に必須要件のチェックをさせるなど、他社にはない振り切った構成になっています。コンバージョン数が減るなどの影響はなかったのですか。

寺村 エントリーのハードルが高くなるのではないかという懸念はありましたが、それ以上に応募時のミスマッチが増えていたという課題がありました。要件を満たしていない求職者からの応募もある状況だったので、エントリーの際に自分で要件をチェックしていただくスタイルにしました。

一方で、検索性を高めるなどの工夫も行っています。結果として応募ミスマッチは減り、コンバージョンも維持できました。

黒田 それは素晴らしい。他の企業様にもお勧めしたいですね。採用サイトから採用メディアまで、様々な取り組みについて伺ってきましたが、オウンドメディアでの情報発信に関して、今後の展望などはありますか。

寺村 メディアを起点とした採用活動を推進し始めてまだ1年ですから、真価を問われるのはこれからです。採用力強化に向けて、発信する情報の内容、伝え方、鮮度などの面でもまだまだ改善の余地があります。今回のアワードからも学ぶことが少なくありません。

黒田 アワードは、他社の事例も見る機会でもありますが、どんな取り組みが印象的でしたでしょうか。

寺村 他社様の取り組みで、チャットボットを使って求職者の疑問にすぐ答えるという例がありました。企業が情報を発信するだけでなく、双方向のコミュニケーションを生むという発想は、私たちにはなかったですね。

黒田 メディアを作って求職者を待つのではなく、企業が候補者を迎えに行くという姿勢は新しい動きですよね。

寺村 採用において、採用サイトやブログメディアを始めとしたオウンドメディアの役割が広がっていると思います。会社説明会の代わりに、企業や採用に関する情報をスライドにして公開するなど、リアルでの施策も含めてメディアに集約していく動きがあると感じます。

様々な新しい動きもあるなかで、企業同士のコミュニティを作って、意見交換ができると良いなと思います。

さきほどの「必須要件チェック」などはオリジナリティがあるかなとは思うのですが、どうしても自社だけではアイデアにも限界がありますし、客観的に評価するのも難しい。複数の企業で議論できれば、大きなものを得られるはずです。

黒田 せっかくアワード受賞企業という縁も生まれたことですしね。

寺村 アワードに関して加えると、エントリーシートにあるオウンドメディアリクルーティングへの対応状況のチェック項目に、インナーブランディングに関連する項目を増やしてほしいです。私たちのようにオウンドメディアを社内報として活用している企業も多いと思いますし、オウンドメディアの役割として正しいものだと考えています。

黒田 なるほど。貴重なご意見ありがとうございます。

効果的な採用を行うためのジョブディスクリプションの考え方についてはこちらもご覧ください

会社全体を巻き込むカギは、明確な目的設定と言語化

黒田氏 インタビューカット

黒田 最後に、オウンドメディアリクルーティングに取り組みたい企業や、これからアワードへのエントリーを検討している企業へのアドバイスを聞かせてください。

寺村 コンテンツの企画(面白さ)は大事ですが、私たちが強く意識してきたのが、一つひとつの記事の目的をはっきりさせて言語化することです。誰に対して何を伝えるのか、ここがぶれると情報が盛り込まれすぎたり、訴求ポイントが不明瞭になったりしますし、社員インタビューのときも得たい情報を引き出せなくなります。骨子をしっかり固めたうえで記事化していくことは、当たり前のようで実は結構時間もかかるし、いざ作ってみると難しいことに気付くと思います。

また、広報やHRなど特定の部門が旗振り役になっても、情報発信の重要性は社内に広がりません。経営陣のコミットはもちろん、各現場の責任者の共感が大切です。そして、記事にも積極的に出てもらうことで、社内に本気度が伝わっていくでしょう。

KPIの設定や、期待値のコントロールといったことも重要です。当社の場合、広告費をあまりかけられないこともあり、KPIをPVで示そうとしても伸びが期待できないため、求職者や内定者の認知率を指標にしました。

最後は忍耐力です。常に情報を発信し続けることが必要で、途切れさせてはいけません。意思の力が問われます。短期と長期の両方の戦略を立てることが求められると言えるでしょう。

黒田 戦略的なアプローチが必要という点では、寺村さんがBusiness Promotionとして担う新規事業推進もオウンドメディアリクルーティングも同じですね。今日はありがとうございました。

https://indeed-omrj.com/post-0175
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