採用情報発信において、SNSと向き合うことが避けられない理由

2022/09/07
採用情報発信において、SNSと向き合うことが避けられない理由

企業が自社のメディアを使って主体的に情報発信することで人材獲得につなげる採用手法であるオウンドメディアリクルーティングの重要性がより増している昨今、採用目的でSNSを効果的に使っていきたいと考える企業が多いだろう。一方で、炎上を恐れてSNSは使いたくないと考える企業も少なくないのではないか。

企業がSNSを始めるときどんなことに注意し、どのように向き合い、どのように成果を上げていけばいいのだろうか。『自分の名前で仕事がひろがる 「普通」の人のためのSNSの教科書』(朝日新聞出版)の著者であり、企業のSNS活用について支援を行っているnoteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦氏に、採用活動におけるSNSの活用術について聞いた。

前編では、SNSがますます重要になっている理由と、採用のための情報発信でSNSを活用することの意義について紹介する。

note株式会社 noteプロデューサー/ブロガー
徳力基彦氏
NTTやIT系コンサルティングファームなどを経て、アジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。代表取締役社長や取締役CMOを歴任し、現在はアンバサダープログラムのアンバサダーとして、ソーシャルメディアの企業活用についての啓発活動を担当。noteでは、noteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるブログやソーシャルメディアの活用についての支援を行う。
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求職者と企業の関係性が変わり、SNSは必須のコミュニケーション手段へ

――求職活動でのインターネットを介した情報収集が増え、コロナ禍の影響もありオンライン面接が進んでいます。採用においてSNS活用の重要性が高まったことで、企業と求職者の関係性はどう変わったのでしょうか。

徳力 インターネット以前は、採用において企業の力が強い時代でした。求職者は、就職情報誌や会社概要を取り寄せるぐらいしか、企業の情報を得る手段がなかったからです。

現在は、求職者が企業よりも強い時代になっています。インターネットによって情報が増えたからです。特に、社員や求職者といった個人による発信が増えたことは、企業にとって大きなインパクトになっています。採用に関する掲示板では、面談はどうだったか、実際に企業に勤めている人がどう思っているかなど、あることないこと含めて無数の口コミが書き込まれています。そのため、企業はかつてのように自分たちが出したい情報だけを出してイメージを作ることができなくなりました。

コミュニケーションの形が従来とは変わったのです。コミュニケーションにはプッシュ型とプル型の2種類のコミュニケーションがあります。

プッシュ型は電話をかけたり、直接会って話しかけたりして、相手に返事を求めるコミュニケーションです。相手のことをよく知ることができますが、手間もコストもかかります。

インターネットによって、個人や企業が得たのはプル型のコミュニケーション手段です。すなわち「ここに情報を載せておいたので、よければ見てください」というコミュニケーションです。これは以前はマスメディアにしかできないコミュニケーション手段だったので、企業側はお金を払ってメディアに広告を出すなどしていました。インターネットによって、これが誰でも低コストでできるようになった。

かつての採用活動では、求職者は書類選考を通過した後の面談で、会社の説明を聞いて初めて判断する機会を得ていました。今は、求職者が先に情報を取りに行って会社の雰囲気を知るなど面談に近いことができます。実際の面接の前に、この企業が自分に合っているどうか判断できるようになったわけです。

企業によっては「うちは知名度があるから、大勢が応募してくる。そのなかから選んで、面接で口説けばいい」と、従来の感覚のままのところもあるかもしれませんが、今は順番が変わっています。企業が優秀な人に選ばれる前に、求職者は自分に合っている企業を選んで応募するわけです。

こうした状況が、コロナ禍によってさらに加速しています。コロナ前は対面で面談することで、インターネット上の情報を上書きすることもできました。しかし、オンライン面談では、対面に比べて会社の雰囲気などの情報量がどうしても少なくなってしまうので、インターネット上の情報の影響力が大きくなっているのです。

――そうしたなかで、求職者が企業との価値観のマッチングを判断するため、企業や社員のSNSを通じて発信される企業のリアルな情報を求める動きは、もう止められないということですね。

徳力 そうですね。企業においてSNSでの情報発信は、コミュニケーション手段の一つとなりました。電話が登場したら電話を使い、メールが普及したらメールを使うように、ユーザーのコミュニケーションの場がSNSに移ったら、企業もSNSを使うべきだと僕は思います。SNSというと炎上のリスクが大きいと考え、使わない選択をする企業も少なくありませんが、SNSを使っている求職者が多いなかでSNSを使わないのは、そこに存在しないのと同じです。

今の若い世代は、飲食店を探すときにGoogleで検索するよりもTwitterやInstagramなどSNSで検索する人の方が多いと言われています。就職活動においても同様で、求職者が「この会社はどんな会社なんだろう」と思ったとき、検索して公式アカウントがなければ「自分たちをターゲットにしていないんだな」と思ってしまう。

毎日発信しなければならないのではなく、あくまでコミュニケーション手段の窓口として開いておくということです。スパムアカウントを作られないためにもアカウントは作っておくべきでしょう。

SNSでは、定量情報ではなく“人間”を伝えていく

徳力基彦氏

――発信手段として、これまでの採用サイトだけでなくSNSを使う意義はなんでしょう。

徳力 SNSでの情報発信は、売り上げや社員数といった定量情報を企業のホームページに掲載するのとは違います。SNSはパンフレットの代わりではなく、前述したようにコミュニケーション手段です。

従来の採用活動においても、売り上げや社員数といった情報はパンフレットを見ていただき、リクルーター面談や会社説明会では企業の思いを伝えることを重視していたはずです。求職者にとっても条件は大事ではありますが、どういう人が働いているのか、どういうカルチャーかといった、定性的な“人間”の情報がとても大事なんです。

オンライン上でも同じです。定量情報だけでなく、インターネット上で“人間”をどう出していくかが、オウンドメディアリクルーティングのポイントです。面談や会社説明会といった対面でのコミュニケーションの代わりを、SNSを使っていかにオンライン上に作るかを考えていただいた方がいいですね。

――社員個人および企業のSNSで、社員の顔が見える発信をすることにとまどいを覚える企業や人もいると思います。

徳力 結論から言うと、社員の顔が見えない企業のままでいくか、社員の顔が見える企業になるかは企業の経営方針次第とは言えます。Appleのように企業イメージや商品に対するファンがたくさんいて、社員のSNS活用はほとんど行わない企業もまだまだ存在します。ただ、これはAppleのような、ファンが社員の代わりに発信をしてくれる企業ならではの選択。一般的には、様々な社員がいて、その顔が見える方が、求職者は「自分もそうなりたい」「こういう人と共に働きたい」と思いやすく、応募者が増える可能性は高いと思います。

SNSに限らず発信するコンテンツは、企業の日常の様子がそのままにじみ出るようなものを主軸に置くといいと思います。例えば、オープン社内報といって社内向けのコミュニケーションを外に出してしまう方法があります。これは採用が主目的ではありませんが、「こんな社内イベントやっています」「こんな内部制度があります」といった社内情報をオンラインに出すことで、社員も検索して情報を見つけやすくなる、社員が知人や家族にどういう会社か紹介しやすくなる、それを見て求職者も入社したいと思うかもしれないなど、一石二鳥、三鳥になる可能性があります。

コンテンツは、ビジョン、ヒストリー、失敗話の3つが大事

――会社のあるがままの姿というとき、ダメな部分を少し開示するのもいいと聞きます。

徳力 会社説明をするときには、ビジョン、ヒストリー、失敗話の3つが大事だと伝えています。そもそも何を目指している会社か、それを実現させるためにどういうことをやってきたという話から入る。これはビジョンとヒストリーです。これによって信頼が生まれ、商品や会社の話を聞いてもらいやすくなります。

この時にいい話ばかりを出して盛りがちですが、ビジョンを実現していく過程で苦労や失敗があるのは当然です。それらを混ぜると自分ごととして捉えてもらいやすくなります。特に今は、企業がいいことしか話さないと「嘘があるんじゃないか」と疑う傾向が強くなっているので、失敗談を明かしたほうが好きにもなってもらいやすいと思います。

――実際にコンテンツを作り続けるのは、大変なことも多そうです。

徳力 採用チームだけで運営するなら、面接を効率化するための記事や動画を作ることから入る方法もあります。従来は面接で会って初めて会社の説明をしていたと思います。そうすると基本的な話だけで所定の時間が終わってしまう。会社の生い立ちや各部署の思いなどを紹介した記事や動画を候補者に事前に送っておけば、毎回同じ話をする手間が減り、面接の時間がより有意義になります。

そうした効率化のための記事や動画をサイト上に増やしていくと、それらが徐々に検索経由で見られたり、応募者の間で話題になったりする「良いハプニング」が起こるようになるはずです。

採用のためのオウンドメディアを運営しなければならないとなると、新しい仕事が増えて荷が重くなってしまうかもしれません。そこで、オウンドメディアで発信するコンテンツを面接の時間を効率化するツールと考え、楽になった時間で次のコンテンツを考えるようなサイクルにするといいのではないでしょうか。

https://indeed-omrj.com/post-0196
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  1. 採用情報発信において、SNSと向き合うことが避けられない理由
  2. 求職者と企業の力関係が変わった今、SNSで採用情報を発信する意味
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