KPIは再来訪の人数。多様性も伝えるメディア「Discover Sony」が作る求職者との継続性

2022/08/31
KPIは再来訪の人数。多様性も伝えるメディア「Discover Sony」が作る求職者との継続性

※感染症対策を徹底した上で、撮影時のみマスクを外しています。

「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」をPurpose(存在意義)に掲げるソニーグループ(以下、ソニー)。2022年1月にリニューアルした採用オウンドメディア「Discover Sony」では、主に人にフォーカスし、多様な視点からソニーのPurpose & Valuesや、カルチャーを感じられる記事を発信している。

リニューアルを主導したのは、ソニーグループ株式会社 採用グループの若林雄大氏と平山明氏だ。第三者視点の発信にこだわり、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(以下、DE&I)を担当する部署とも連携しながらソニーの“中身”を可視化してきた2人に、オウンドメディアをどう採用施策に活かしてきたのか聞いた。

ソニーグループ株式会社 採用グループ
若林雄大氏
新卒で入社した大手SIerを経て、人材関連サービス等を展開するメガベンチャーに入社。主にクライアント向けの人事関連のソリューション提供業務・新規ソリューション開発に従事。2020年7月にソニーグループ株式会社に入社。現在は、グループ全体の採用力向上に向けた施策の企画推進と、経験者採用組織のマネジメントを担当。
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ソニーグループ株式会社 採用グループ
平山明氏
人事コンサルティング会社等を経て、人材関連サービス等を展開するメガベンチャーに入社。主にクライアント向けの人事関連のソリューション提供業務に従事し、大阪、名古屋、東京の各拠点で数名~数十名規模のマネジメントを経験。その後、スタートアップ企業に入社し、物流SaaS/マッチングプラットフォーム事業の人事責任者として、HR領域を統括した。2021年7月にソニーグループ株式会社に入社。
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ソニーの“中身”を知ってもらうための採用オウンドメディア「Discover Sony」

若林雄大氏

――2022年1月に、求職者に向けたソニーグループの情報発信メディアとして「Discover Sony」をリニューアルされました。その背景にはどのようなお考えがあったのでしょうか。

若林 「Discover Sony」では、「ソニーに関わる様々な『人』を通じて ソニーのビジネス、テクノロジー、カルチャーをオープンに」というコンセプトのもと、人にフォーカスした記事を中心に、現在まで80本ほどの記事を公開してきました。

私と平山は、経験者採用で入社した自分たち自身の経験からも、ソニーという企業・ブランドの認知は高いものの、採用市場における働く場としての認知は必ずしも高くない点に課題感を抱いていました。また、求職者からは、企業カルチャーが堅そう、年功序列などのイメージがあるという声が寄せられていましたが、これは社員が感じる自社とは違います。外から見たソニーと実際のソニーとにギャップがあったのです。

実際、学生と社会人を対象に行ったマーケット調査によると、どちらの層でも、社名・企業規模以外の認知が低い。同時に、求職者が重視しているのは、企業カルチャーや働き方だということもわかってきました。そのため、「Discover Sony」は、そのギャップを埋めてソニーの“中身”を理解いただくためのオウンドメディアとも言えます。

インターン生など「第三者視点からの発信」が情報の信頼性を高める

編集部で活躍するインターン生を紹介する記事のメインビジュアル
編集部で活躍するインターン生を紹介する記事のメインビジュアル。個性ある6名から提案されるネタに、ハッとさせられることもあるという

――「Discover Sony」で特に大切にされていることや、情報発信のポイントを教えてください。

平山 私たちは、求職者を大きく「顕在層/潜在層」に分けて捉えています。

おそらく、ソニーで働くことに興味がある「顕在層」へは、グループのポータルサイト(コーポレートサイト)の情報や採用ページの企業情報を軸として、ソニーの魅力をピュアに伝えれば理解を深めていただけるし、自然と応募のアクションにつながると思います。ソニーが選択肢にある、だからソニーの働き方やカルチャーを調べてみる、という順序ですね。

しかし、ソニーが就職・転職先として候補に入っていない「潜在層」に刺さるのは、そのような企業情報ではなく、どんな人がどんな環境で、どんな想いで働いているのかといった情報ではないでしょうか。先に、こんな働き方ができて、こんなカルチャーの企業でキャリアを歩んでみたいという共感があり、それを実現できそうだからソニーを選択肢に入れるという順序です。

つまり、顕在層と潜在層では、アクションが真逆なのです。

若林 「Discover Sony」がメインターゲットにしているのは、その潜在層です。潜在層に伝えるべきは、平山が申したように企業情報ではなく、働き方・企業カルチャー・社員の想いなどでしょう。その多くは、定性的でフワフワしていて、伝わりにくい情報です。だからこそ、「人」を通じて伝える必要があると考えています。

それらを踏まえ、「Discover Sony」で特に重視しているのは、第三者視点からの情報発信です。私のような採用担当者が「ソニーはすごくいい会社だよ」と言っても、求職者が「そりゃ、そう言うよね。でも、本当かな」と捉える可能性は高い。それよりも、採用担当以外のソニー社員や外部の人に“ソニー”を話してもらった方が、情報の信頼性は高まるはずです。

平山 情報というのは、誰が主語であるかで信憑性や重みが変わってきますよね。「Discover Sony」では、例えば、元ソニー社員(ソニーを退職した人)のインタビューも掲載しています。ソニーの「良かったところ」だけでなく、「イマイチだったところ」などもオープンに伝えられるようにしています。

若林 学生インターンもチャレンジの一つですね。先述したマーケット調査の結果からもわかるように、採用サイトでは企業が求職者に伝えたい情報だけでなく、求職者が知りたい情報を発信することが求められます。

大学生の視点でソニーを見たら、社内の私たちが気付かなかった魅力や、より求職者が知りたい情報を届けられるのではないか。そんな発想から、現在、6名の現役大学生・大学院生をインターン生として編集部に迎えています。

平山 「学生ライターとしてインターン生を受け入れたい」という話が出たのは、リニューアルの2カ月前くらいだったと思います。第三者視点を大切にしたかったので、ソニーへの就職を考えていない学生にアプローチし、インターン生として受け入れる意思決定をしました。就職先としてソニーを考えていない学生が「知りたい情報は何か」「大事にしている価値観は何か」を知ることができ、我々としても学べる部分が大きいと考えたからです。

若林 インターン生が中心となって制作したものに、例えば、新入社員(インタビュー時点では内定者)に「ソニーのPurposeで表現されている『感動』を、採用現場でも実感することができましたか」と率直な思いをぶつけた記事があります。これは、「様々な企業がパーパスを掲げている。でも、本当に社員に浸透しているのだろうか。浸透しているなら、ソニーの採用活動においてもPurposeを感じられるシーンはあるのだろうか」という、彼らからの疑問が発端となっています。

DE&I担当部署とも連携し、多様性を重視するソニーのカルチャーを広く発信

「みんなで知っておきたい!不妊治療の『今』とキャリア形成」という記事のメインビジュアル
みんなで知っておきたい!不妊治療の『今』とキャリア形成」という記事のメインビジュアル。社員向けオンラインセミナー「不妊治療について考えてみませんか?」の実施と連動して、不妊治療の現状や課題、ソニーの制度を発信している

――ソニーは早くからDE&Iに取り組み、採用ページにおいても情報発信しています。そのような企業姿勢は、採用においても影響がありますか。

若林 ソニーは、「多様な人、異なる視点がより良いものをつくる」を「Values(価値観)」とし、「多様な人、異なる感性が、互いを尊重しながらも、時にグループの垣根も超え、ダイナミックに混ざり合う。そうした多様性がイノベーションを生み、活気に満ちた企業文化をつくる。」という考え方が、ソニーのDNAであり、DE&Iに対する姿勢です。私たち採用グループも、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進室(以下、DE&I推進室)を中心とした担当部署と協議しながら、DE&Iを求職者にきちんと伝えるために何本も記事を制作しています。

一方、DE&I推進室にも、DE&Iへの企業姿勢を発信するサイトはすでにあるけれど、さらに情報発信を強化したいというニーズがありました。そこで、検索ボリュームの大きい「ソニー×採用」と連携をすれば、ソニーの取り組みをより広めていけるのではないかと考えたのです。両者の足並みが揃ったため、連携はスムーズにできています。

さらに、採用市場に関わらず、同分野への企業姿勢に対する社会の関心は急速に高まっており、サステナビリティやESGに対する取り組みを示すことで、あらためてソニーのカルチャーを知っていただくチャンスでもあります。例えば最近だと、担当部署が主催する「不妊治療の社内セミナー」や「ちちおや育休セミナー」を取り上げた記事を制作しました。

この2記事は最近のトピックスですが、ソニーはDE&Iに関してとても早くから取り組んでいます。初の女性管理職が生まれたのは1973年。1978年には、障がいがあってもソニーのものづくりを通じて自律をめざすソニー・太陽株式会社の前進である法人・サンインダストリーを設立しています。

とはいえ、社会の価値観変化を踏まえ、女性技術者や女性管理職の比率をどう上げていくのか、そのための人材戦略をどうするのかといった課題などは常にあります。その課題を踏まえて、私たちも「ソニーでは、多くの事業領域で多様な人材が活躍できる」という環境やカルチャーを伝えるために、理系の女性がエンジニアとして活躍する姿、大学で農学系を専攻していた方や経験者採用からキャリアを築いていった方のインタビュー記事なども制作してきました。

おかげさまで、今年度の新卒採用では女性の応募者が増えました。現時点では、直接的な効果は検証できていませんが、「『Discover Sony』の記事を読みました」と話される応募者の方がいることからも、一定の効果はあったと捉えています。

「再来訪のUU」をKPIとし、継続的な接点を生むオウンドメディアを目指す

平山明氏

――オウンドメディアによる情報訴求をどう進化させていくのか。「Discover Sony」の展望をお聞かせください。

平山 「Discover Sony」のリニューアルから約5か月間は、さきほど申し上げた「潜在層」の来訪を促すための流入経路としてSNSを活用していました。広くターゲットを定めて初期認知拡大を目的にSNS広告を実施したところ、実施した月としなかった月では10倍ほどサイト流入数に差があったので、一定の効果はあったと感じています。

重要なのは、そこで「Discover Sony」を知った人たちと、どれだけ継続的につながれたのかということ。私たちが目指すのは、オウンドメディア経由での応募者や内定者が増え、ソニーの採用ポートフォリオや採用コストが最適化されていく状況です。とはいえ、そこまでを一足飛びにとはいきません。今目標とすべきことは、「『Discover Sony』への再来訪者数を最大化すること」だと考えています。

一般的に、採用のためのオウンドメディアは、大きな目的である「入社」との距離感がけっこうありますよね。メディアを見た人がすぐにアクションを起こしてくれるわけではなく、何度もサイトを訪れて様々な情報を得て、初めて「応募してみようかな」と考える。そこに至るまでには、かなり長いタイムラインがあると思うのです。そのため、採用候補者になりえる人がオウンドメディアとつながり続けることが重要です。

具体的には、新しく接点を持ってくれたユーザーを次回の来訪につなげて、ファンとして積みあげていくこと。つまり「リテンション」が鍵になるはずです。

例えば、同じ10,000ユニークユーザー数(以下、UU)でも、「新規UU9,000・既存UU1,000」と「新規UU5,000・既存UU5,000」では意味合いが違います。再来訪をしている既存UUの多い方がファン率は高いと言える。そのため、私たちは、単なるPVやUUではなく「再来訪のUU」をKPIとしています。

KPIの具体的な数字は公表していませんが、1年、2年といった少し長めの時間軸で、採用ポートフォリオがどう変わったのか、「Discover Sony」経由で採用できた人が何人いたのかなどを検証していく必要があるでしょう。距離感があるからこそ、意味のある数字をどう積み上げていけるのかを重視して取り組んでいくつもりです。

若林 最近は社内からも、「情報を発信したいから力を貸してほしい」「こんな取り組みをしているから、紹介してくれないか」といった相談が増えてきました。「Discover Sony」自体、採用グループ単体で作り上げられるものではなく、主役は記事に登場する様々な現場の社員や人です。今後も、各部署の取り組みを尊重しつつ、採用の観点で発信をしたほうがより多くの人に届けられ、採用に寄与する効果が認められるという点においては、積極的に連携してリレーションをより強固にしていくつもりです。全社を巻き込んで、より、ソニーへの理解を深めていただけるようなメディアに成長させていきたいですね。

https://indeed-omrj.com/post-0198
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