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日本の採用市場において転職がより一般化し、ジョブ型採用も広がり始めるなど、企業と人の関係が変化しつつある。米国では、HRテクノロジーがいち早く導入されHRに変革が起きている。
経済がグローバル化するなか、米国における採用市場の動向を見つめ、日本との相違点や共通点を探ることは、日本の採用がどう変わっていくかを考えるにあたって大きなヒントを得られるのではないか。
そこで今回は、Indeedの米国の採用ストラテジストであるジェフリー・ジョンソンのインタビューをお届けする。
後編では、テクノロジーによって採用市場を変えようとしているIndeedがもたらしたインパクトや、米国の採用市場で起きているトレンドについて語ってもらった。米国における採用の最先端を見つめることで、採用が今後どのように変わっていく可能性があるのかを考えていく。

Indeedは採用プロセス全体を支援するプラットフォーム
Indeed Japan 採用市場の変化に対し、企業はどのようにIndeedを活用しているのでしょうか。
ジョンソン Indeedは米国では求人サービスでは最大手(*6)で、Glassdoor(*7)を合わせると、他の求人サイトの2.5倍の採用数を誇ります(*8)。
*6 参照元:Comscore, 総訪問数, 2022年5月
*7 現在働いている従業員や元従業員が匿名で会社をレビューするWebサイトを米国で提供しており、Indeedと同じくリクルートグループに属する
*8 参照元:BreezyHR Sources of Hire Report 2021
Indeedで人材獲得に成功している企業は、単なる求人情報を掲示できるサイトではなく、仕事探しの検索エンジンとしてIndeedを活用しています。つまり、一般的な検索エンジンで最適化を行うように、その仕事を探す求職者が見つけやすいように、ジョブディスクリプションのタイトルや内容を最適化しています。
ジョブディスクリプションが最適化されることで、求職者が次のステップに進む際の離脱を防ぐことができます。
また、米国のIndeedは応募から面接、そして最終的なオファーまでのワンストップ型のプラットフォームを展開しており、求職者の体験を改善しています。企業はIndeedを通じて、何人の求職者がクリックしたのか、実際に応募しているのかなどのデータを得られ、雇用までのプロセス全般を改善するのに役立てることができます。
これに加え、企業ページがあり、求職者の履歴書データベースもあって、米国のIndeedでは企業が求職者に直接コンタクトすることも可能です。
このように、企業はあらゆるチャネルにおいてIndeedを活用して人材を探し、求職者と関係を深めていくことができます。企業と求職者の双方のニーズが合致すれば採用につながります。
Indeed Japan Indeedは、日本では求人検索エンジンという認知に留まっていますが、米国では仕事探しをより広範囲にわたって支援するサービスである、と認知されているんですね。採用担当者は採用に必要なプロセスのほとんどをIndeedで行うことで、自分たちの仕事を効率化できますね。
米国では、採用プロセスにおけるデータの活用はどの程度進んでいるのでしょうか。
ジョンソン 先進的な採用担当者はデータを使って意思決定しています。米国のIndeedでは、企業評価やWork Happiness Scoreなどが企業ページ上で見られるようになっているのです。それらのデータを企業や採用担当者が活用し、ジョブディスクリプションの作成や求職者とのコミュニケーションの改善に役立てています。例えば、口コミで挙がっているキーワードをジョブディスクリプションに含めるなどの対策があります。まずは様々なジョブディスクリプションやタイトルを試してみると良いでしょう。
今後の仕事探しでは自動化が担う部分が増え、採用はデータドリブンへ

Indeed Japan 米国ならび日本において、これからの採用市場はどのように変わると予想していますか。企業は、どのような採用手法を取るべきでしょうか。
ジョンソン さきほどお話したように、求職者は報酬の次に、仕事に幸せを感じることが重要だと考えています。「Am I happy at work?」と誰もが自問しています。コロナ前なら、ハイテク企業などがよく、卓球台が置いてある素敵なインテリアのオフィスで人材を引き付けていました。これはリモートになると通じません。素敵なオフィスよりも、帰属意識、やりがいや熱意を感じられるかを求職者は重視しています。
企業においては、これらを満たすことができることを伝える採用ブランディングが重要になります。これらの価値観を求職者とうまく共有できる企業が、採用で成功する企業となるでしょう。
その際、採用体験を向上させるためにキーワードになるのが、自動化だと見ています。ビデオ面接などテクノロジーが果たす役割は増えており、求めているスキルを満たすかどうかや求職者がどれだけ関心をもっているかについての評価など、自動化を適用できるプロセスがあります。リモートワークの普及により、全米を対象に募集できる職種も増えていて、これまでとは違う方法で求職者を見る必要があります。そこでも自動化は期待できます。
ただ、この分野で扱うデータはプライバシーに関するものが多く、取り扱いには配慮が必要です。さらに、転職は求職者にとって人生のライフイベントであり、採用は企業にとっても重要な決断です。すべてを自動化するのではなく、採用プロセスのなかで部分的に自動化を適用することで効率化を図り、採用体験をより良いものにできます。
Indeed Japan 世界が大きな転機にあるなかで、求職者のマインドセットも変化しています。企業は過去を振り返って未来を予測し、求職者に向き合ってエンゲージメントを高めていく必要がありそうです。
採用プロセスの一部で自動化を適用することで、採用担当者は効率と効果を改善できます。これにより求職者とのエンゲージメントを高められれば、応募する前から企業とつながっていると感じることができそうですね。
ジョンソン そのとおりです。求職者は企業とつながっていると感じなければ応募しないでしょう。その点でも、採用ブランディングは重要です。
HRで重要になっている、雇用機会をより開かれたものにする動き
Indeed Japan さきほどダイバーシティ&インクルージョン、帰属意識などのキーワードが出てきました。これらのトピックは、昨今のHR全体において特に重視されているのでしょうか。
ジョンソン ダイバーシティ&インクルージョンと一口に言っても、実に様々な意味合いをもちます。女性と仕事、社会経済的に見た現状などがあるなかで、このところ米国でよく話題になるトピックの一つが報酬の透明性です。例えば男女間の報酬格差に関しては、複数の州で求人情報で賃金を開示するように法制化する動きもあります。これは大きな変化と言えます。
Indeed Japan 日本では、企業が求人情報を出す際に給与を明示するように職業安定法で定められています。これはリクルーターにとっても、報酬について詳細に説明する時間を省略できるメリットにつながっているようです。
ジョンソン 一般的に求人情報に報酬についての情報を載せると、求める人材像にマッチする求職者をより多く集めることができ、求職者のクオリティが高くなると言われています。仕事における平等性は重要なトピックです。
もう一つの変化が、学歴や職務経歴の要件を取り除く動きです。これまで、仕事は学歴との結びつきが強かったのですが、学歴や職務経験がなくても機会を提供すべきだという考え方が出てきています。
これらの変化の背景には、求人に対して応募者が不足している状況があり、企業は採用要件を見直し始めています。雇用機会が今後もっと開かれたものになることは間違いなさそうです。