「学生と介護の距離を縮めたい」、ニチイ学館が動画で実現する求職者に寄り添う採用情報発信

2022/10/06
「学生と介護の距離を縮めたい」、ニチイ学館が動画で実現する求職者に寄り添う採用情報発信

ニチイ学館の新卒介護職向けリクルーティング動画「やさしさも、自分らしさ。」篇が、米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「SHORT SHORTS FILM FESTIVAL & ASIA 2022」において、企業や広告会社が制作したブランディングを目的としたショートフィルムの祭典「BRANDED SHORTS 2022」の「HRアワード」を受賞した。

進路に悩む高校生が、日常の様々な「やさしさ」の風景を目にして「介護」という仕事に興味を持つまでのストーリーを展開した本作。バックに流れる歌『線路は続くよどこまでも』の曲に乗せた「胸のなかにあるやさしさが/君が誇るべき強さだよ」「僕は僕の声 信じゆけ」という温かくも力強い歌詞が、学生の一歩を促す応援メッセージとなっている。

Indeed Japan マーケティングディレクターの水島剛がファシリテーターを務め、採用における動画の可能性を掘り下げる本シリーズ。第4弾として、株式会社ニチイ学館 事業統括本部 人財開発事業本部 人財開発事業部プランニングマネージャーの大越健介氏と、ブランディングのパートナー会社である株式会社パラドックス ブランディング・ディレクターの松永実氏を迎え、受賞動画に込めたメッセージや制作の背景についてお話を伺った。

株式会社ニチイ学館 人財開発事業部プランニングマネージャー
大越健介氏
2013年に広告会社から転職。2019年に人材確保に向けた課題解決を推進する新設部門に異動。翌年より新卒介護職の採用活動を本格的に推進。
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株式会社パラドックス ブランディング・ディレクター/コピーライター
松永実氏
大学卒業後、大手消費財メーカー広告作成部にコピーライターとして入社。商品コンセプト・ネーミングからTVCM等のマスプロモーションを経験。2017年より現職。以来様々な業界、領域での企業ブランディング・クリエイティブを担当。各広告賞等、クリエイティブ領域での受賞歴多数。
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Indeed Japan株式会社 マーケティングディレクター
水島 剛
2004年米国ボストン大学学士号取得。05年博報堂入社。戦略プランナーとして、家電、車、ゲーム、流通、コスメ、飲料、教育、インフラ、動画コンテンツ等、様々な企業やサービスのマーケティング課題の解決業務に携わる。15年LINE株式会社に入社。「LINEバイト」「LINE Pay」のマーケティング責任者として、戦略立案から施策実行まで全プロセスをリード。18年2月より現職。Indeed Japanの求職者向け、および採用担当者向けのマーケティングコミュニケーションを統括する。
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介護業界における若手の不足と採用難という社会課題に取り組む

ニチイ学館 事業統括本部 人財開発事業本部 人財開発事業部プラニングマネージャーの大越健介氏

水島剛(以下、水島) ニチイさんのリクルーティング動画が「BRANDED SHORTS 2022」の 「HRアワード」を受賞されました。ニチイ学館さんは採用に関して、どのような課題をお持ちだったのでしょうか。中途採用と新卒採用、それぞれについて教えてください。

大越健介(以下、大越) 3年ほど前、現場の人材不足の課題に取り組む部門として人財開発事業部が立ち上がりました。中途採用に関しては母集団形成の難しさが課題です。また、若手人材の不足も大きな課題となっており、あらためて新卒採用を積極的に行うことにしましたが、採用の難しさを感じています。

そのような状況で、職業選択時に介護業界を選んでもらえないのは、介護の仕事の魅力が伝わっていないのでは、ということになり、ブランディングのパートナー会社としてパラドックスさんにお力添えをいただきました。

水島 パラドックスさんにご相談をしたのは、どういったきっかけからだったのでしょうか。

大越 コンペを行い、そのなかでパラドックスさんの提案が「ツールだけでなく、学生に相対する社員の方々まで、一貫したコミュニケーションを取ることが大事」と掲げていたことと、社風として「志」を大事にされていることが決め手となり、お願いすることにしました。介護は無形のサービスなので志や思いが大事だと考えており、価値観が共通していると感じました。

水島 採用の課題を解決するために、具体的にどのような施策を立てたのでしょうか。

大越 新卒介護職採用のブランディングにゼロベースから取り組むことになり、採用のステートメントやコンセプトを策定することになりました。

現場の意見を聞きつつ、採用スローガンを新たに設定

介護の日常MOVIE「やさしさを、生きる力に。」篇

水島 採用人数の目標を定めるといったことではなく、採用ブランディングから見直そうとなったのはなぜですか。

大越 パラドックスさんから「介護職の採用なのであれば、まずはニチイさんの考える介護の仕事の意義や魅力とは何か?を言語化することが採用ブランディングの第一歩なのではないか」とご提案いただいたのです。そうして生み出されたのが、介護の仕事の本質的な価値を表したコンセプトスローガン「やさしさを、生きる力に。」です。

このスローガンを決めるにあたっては、現場で働いているスタッフを巻き込まないと成功しないと考えました。ニチイの介護事業の組織は本社の下に支社が全国6支社、94の支店があり、さらにニチイグループ全体では1,900近くの介護拠点があります。

そこで働くスタッフと本社が同じ価値観を持ち、同じ温度感で採用に取り組もうと、現場スタッフからアンケートを取り、実際に現場スタッフにプロジェクトへ加わってもらいディスカッションを重ね、様々な角度からニチイの強みやニチイらしさを抽出し、パラドックスさんに言語化いただきました。それを軸として、様々な採用施策を展開することになりました。

水島 具体的にどのような展開を考え、実施したのでしょうか。

大越 まず取りかかったのが採用サイトの制作です。中途採用のサイトはすでにありましたが、新たに新卒向けの採用サイトを制作しました。

それに付随する形で、今回冊子も制作しています。学生の就職活動にあたっては親御さんや就職指導室の先生のアドバイスも重要になるため、学生はもちろん親御さんや先生にも介護職の意義や実態を知ってもらうことを目的としました。

その流れで、もっと介護を知ってもらおう、もっとニチイを知ってもらおうと制作に至ったのが今回の動画です。自社の介護拠点のスタッフがお客様と接している様子にフォーカスした、介護の日常MOVIE「やさしさを、生きる力に。」篇と、今回アワードをいただいた新卒介護職 採用MOVIE「やさしさも、自分らしさ。」篇の2本があります。

ニチイ新卒介護職 採用MOVIE『やさしさも、自分らしさ。』篇

水島 受賞作のコピーを、採用スローガンである「やさしさを、生きる力に。」ではなく「やさしさも、自分らしさ。」にしたのは、どのような意図からですか。

松永実(以下、松永) 今回の動画は、「介護はこういうものです」と仕事内容を説明しても、介護職と距離が遠い学生には届かないのではないかという懸念がありました。そもそも学生の時点で将来を選択するのはすごく大変ですし、就職以前に自分らしさを見つけることも大変です。

学生と介護の仕事の距離をどうやって近づけるか。スローガンの言語化の過程で感じたのは、もしも世の中に「やさしさの専門家」という人たちがいるなら、それは介護に携わる方々のことを言うのではないかということでした。「やさしさ」を大切に仕事をしていける場所が社会にある。そう思えたら、学生と介護の距離がちょっとは近づくんじゃないか。人に優しくすることが好きだという学生に届くように、「やさしさも、自分らしさ。」という言葉を置きました。

水島 そうなんですね。「やさしさを、生きる力に。」は、あくまで企業側からのメッセージのように感じますが、「やさしさも、自分らしさ。」は、よりユーザーに近い印象があります。学生に寄り添う動画のコピーとしてもしっくりきますね。

パラドックスさんとニチイさんのチームはどのぐらいご一緒されたんですか。また、動画の制作はどういった体制で、どのようなプロセスを踏んでいったのでしょうか。

松永 採用ブランディング全体でご一緒している期間は、丸2年半ぐらいでしょうか。動画に関しては、基本的に企画やシナリオは僕らが行い、映像の制作会社さんも巻き込んで「こんなメッセージなら、こんな画が撮れるといいね」といった打ち合わせを重ね、ニチイさんにご提案し、ニチイさんのご意見をお聞きしながら作り込んでいきました。

動画はスタッフの愛着に寄与し、採用力の底上げになると会社に説明

パラドックス ブランディング・ディレクターの松永実氏

水島 採用サイトやパンフレットなどいろいろなコンテンツを作り、最後にもっと介護を知ってもらおうと制作したのが動画とのことですが、ブランディングを目的とした動画などのツール制作は、経営層の了解を得るのが難しいという声もよく聞こえてきますが、社内の説得などはスムーズにいきましたか。

大越 そこは苦労しました。今回の新卒のブランディングという活動は、成果がタイムリーに戻ってこない領域ですので、

なぜ採用ブランディングを行う必要があるのか、なぜこれだけの費用をかけるのか、動画はもちろん、なぜ一つひとつのツールが必要なのか。松永さんに何度も足を運んでいただき、経営層と共通認識を持つための工程を重ねました。

水島 数字的なインパクトを出して説得したのか、もっとシンプルに「これが必要なんだ」と言い続けて説得したのでしょうか。

大越 「この活動によって来年、何人採用できます」と数字的な部分を言うことは難しい。ただ弊社は介護業界のリーディングカンパニーですが、他社よりも新卒介護職の人数が少ない課題はありましたので、そこを取り返しにかからなければいけないという会社の立ち位置を経営層に再認識してもらいました。

そのために、通常の活動ではなく現場から本社まで一気通貫した採用メッセージが必要で、そのメッセージがゆくゆくは新卒採用だけでなく、スタッフの会社への愛着にも寄与していくと。

水島 松永さんからも、直接経営層にお話されたんですか。

松永 今回、最初にお引き受けしたときに、全国94支店にそれぞれにいらっしゃる採用担当者が学校に足しげく通っているけれども、介護の仕事の魅力をストーリーとして伝えるのが難しいというお話をいただきました。

学生にとって、職業選択は働く人の印象で決めることも多いと思うんです。目の前の採用担当者が自分の仕事を誇らしく語っていたら、それだけで魅力になります。魅力的な仕事をされているのに、それが伝わらないのはもったいない。求職者にきちんとお話できる材料が必要ですし、スタッフが介護の仕事の素晴らしさを確かめることが必要ということも経営層にお話させていただきました。

水島 動画が求職者に届くだけではなく、社内の人たちへの啓発のコアとなるコンテンツになる。その結果、求職者にフェイストゥフェイスで接触するときの説得力が増し、採用力の底上げになるということですね。

松永 そうですね。最初はツールの依頼をいただいていましたが、求職者に「この会社に入りたい」と思ってもらうには、ツールだけ作っても意味がありません。ツールは補助といいますか、お話いただく方を助けるためのものです。いろいろなタッチポイントで設計をしていきましょうとご提案し、動画はその一つです。

水島 今のお話は我々が推進しているオウンドメディアリクルーティングそのものですね。オウンドメディアは自社のサイトだけでなく、ソーシャルメディアのアカウントや、社員自身もオウンドメディアであると捉えられます。

これらのメディアを活用しながら、自社が主体的に採用活動をしていく必要性があると考えています。動画もツールの一つです。それぞれのツールが与える影響があって、それらが組み合わさって採用がうまくいくようにきちんと全体設計がされているのだと、お話を聞いていて理解できました。

採用チームだけでなく、経営層、パートナー会社がワンチームに

Indeed Japanのマーケティングディレクターの水島剛

松永 一つのツールに経営層のジャッジが入るのは珍しい体制だと思いますが、僕たちもワンチームになって採用ブランドを作ることが大事だと思っていたので、毎回介護の本質に対するご意見をいただけてありがたかったです。そういった体制を取ってくださったニチイさんには感謝しています。

水島 我々はよく「オウンドメディアを活用した情報発信では、その企業が主体であるべきだ」と言っています。今のお話を聞くと、パラドックスさんがニチイさんのチームにガッツリ入り込んで、ニチイさんの社員と同じような感覚で仕事をされ、ニチイさんとして発信するくらいの気持ちで作られたのだと思います。そこが上手くいったポイントなのではないかと感じました。

最後に、この動画コンテンツを活用したことの具体的な成果を教えてください。

大越 社内におきましては、この動画を作ったことであらためて自分たちが提供している介護というサービスの持っている温かみや優しさ、やりがいを再認識できたという声が社内で上がっております。社内を活性化させる意味において効果があったと思っています。

採用においては、YouTubeやTwitterで配信を行って、延べ約44万回の視聴をしていただいています。インターンや説明会のイベントに来場した学生からは「この動画を見て興味を持った」という声が上がっているので、一定の認知獲得という目的においては寄与していると思います。

水島 今後も動画を中心に、採用のための情報発信に注力することを考えていらっしゃるということでしょうか。

大越 新卒採用において、介護の仕事に対するイメージを持っていただくためには、動画は必要不可欠です。

学生と介護職の距離を縮めていくうえでは、現場で活躍しているスタッフの姿や声を届けていく必要がある。それを形にするとき、インタビュー記事の掲載など様々な方法も含めて検討し、動画が最適であれば動画という選択肢を取ろうと思います。

https://indeed-omrj.com/post-0202
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  1. 動画プロデューサーの明石ガクト氏が語る、これからの採用における情報発信の本質
  2. 国際短編映画祭“ショートショート フィルムフェスティバル & アジア”が選ぶイチオシHRムービー——BRANDED SHORTS 2022レポート
  3. 明石ガクト氏直伝。企業が主体となって発信する、効果的な採用動画の作り方。
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